私はプレス種目を行なう時のグリップ幅を、その種目や目的などによって自在に変化させています。
ですが極端なワイドグリップやクローズグリップにする事はまずありません。
様々な関節の負担が大きくなり過ぎてしまい危険だからです。
私の場合、一番ワイドでも小指が81cmラインに触れる位、ナローは肩から腕を鉛直方向に伸ばして握れる位までの位置で調整しています。
当然かもしれませんが、同じ重量を挙げる場合だとナローになるほど動作がキツくなります。
体幹に近い筋群の動員率が低くなり、上腕の伸筋群の負担が大きくなる上、決定的に運動量が多くなるからです。
ですからほとんどの人はトレーニングを続けていく中で、少しでも高重量を挙げようと無意識に段々とワイドグリップになる傾向があるように思います。
もちろんそれが間違っているとは思いませんが、ワイドグリップでトレーニングをしていて記録が伸びなかったり、動作に支障をきたすほど肩が痛くなるような場合は一度グリップ幅を見直す必要があると考えています。
前にも書きましたが、ワイドグリップでトレーニングをしていて肩が痛くなる場合、原因はほぼ間違い無く棘上筋か上腕二頭筋の長頭の腱の炎症か断裂です。
棘上筋はローテーターカフ筋の一つで、上腕骨と肩甲骨を繋げ、筋肉ですがその役割は靭帯のような働きをする事です。
ローテーターカフ筋とは回旋筋腱板の事で、非常に硬いインナーマッスルです。
ワイドグリップでベンチプレスなどを行なうと、肘の位置が体幹から大きく離れ、下手をすると肘が肩のラインと同じ位にまで並んでしまう場合があります。
肘が体幹から離れる程、肩甲骨が上方に移動し内側への動きが制限される為、上腕の可動域が狭くなって結果的にこれらの小さな筋肉に過度なストレスがかかります。
また上腕二頭筋の長頭は、上腕骨の横にある結節間溝という浅い溝に沿って肩甲骨に付着しているので、肩甲骨の動きが悪くなれば当然そちらにも負担がかかります。
ベンチプレスでバーを深く降ろす程、二頭筋の長頭は伸展する上、溝に強く押し付けられるような形になる為、ボトムに近いポジションになる程痛みが激しくなる場合がほとんどです。
このような痛みを我慢してトレーニングを続けても、まず良い結果など期待出来ません。
かと言って、トレーニングする事が生き甲斐のような人には、休むという事が一番辛いと思います。
事実この私もそうでしたが長い経験で感じたのは、やはり定期的に身体を休ませる事が必要であり、一時的に筋力の低下があろうが必ず良い結果が出るという事です。
私もスキーをしたり旅行に行ったりしてトレーニングをしょっちゅう休んでいます。
ですが休む事によって、身体だけでなく気持ちもリフレッシュ出来るので、トレーニングを再開した時はまた新鮮な気持ちで集中して出来るもんです。
ちなみに私の性格上、トレーニングだけを年がら年中続けていたら、とうの昔に辞めてしまっていたでしょう。
長い人生で考えてみても、健康の為にトレーニングを続けるというのは非常に大切、いや必要不可欠といえます。
そういう意味でも私はトレーニングだけでは無くて、色々な事を楽しむようにしています。
痛みを我慢して何かに取り憑かれたようにトレーニングし、肩の筋肉を断裂したりするのははっきり言って馬鹿のやる事です。
身体を鍛える目的のトレーニングで怪我をするなど本末転倒もいいとこです。
球状関節である肩は、人体の中で一番可動域が広く自由度が高い関節です。
故に肩の筋肉のみならず、背中、胸、腕など様々な筋肉の通り道になっていて、自由度が高い分モロくて痛めやすい部位でもあります。
痛みという身体が発する注意信号を無視してトレーニングを続ければ、良い結果どころかいつか必ず酷い怪我をするでしょう。