高峰秀子の流儀/斎藤 明美

¥1,680
Amazon.co.jp
大女優、高峰秀子。
この本は高峰、松山善三夫妻を「かあちゃん、とうちゃん」と慕った作家、斎藤明美さんが婦人画報に掲載した記事をまとめたものである。
勿論お名前は存じ上げていたが、この本を読むまで高峰秀子という人の壮絶な人生を知る由もなし、主演された映画の一つもちゃんと見たことのない私である。
が、年末に亡くなられ本屋さんに追悼として並んだ本の数々を見るうち、ふと、同年代の母に読んでもらいたいと思った。
それはこの本の目次のあまりの潔さからであった。
「動じない」「求めない」「期待しない」「振り返らない」「迷わない」「甘えない」「変わらない」「怠らない」「媚びない」「驕らない」「こだわらない」。
これらのどれ一つをとっても私には成しえないものばかり。
だが…
著者いわく、高峰秀子という人はこれらのどれもを兼ね備えた人だというのだ。
さらには“年寄りの三種の神器”「昔話」「愚痴」「説教」からも無縁の人だという。
長年付き合った著者自身も彼女の事を、稀有な存在だと大絶賛している。
「いや~それは“好きになったらアバタもエクボ”ってことじゃないの?」ではないらしい。
ではいったい彼女はどういう人なのか。
著者は言う。人は大別すると大方次の3つに分けられると。
①何もわからない人
②わかっているが実践できない人
③わかっていて、なおかつ実践できる人
高峰さんは間違いなく③の人だそうな。
「人としての理想、人としてどうあるのが麗しいか、本当の幸福とは何かを知っている人、そして実践している人、そこが高峰秀子さんの普通じゃない所なのだ」という。
世の中にこれほどの自制心で人生を歩んできた人がいるだろうか。
聖人としか言いようのない高峰さんの86年の人生の来し方とは…想像するだにすさまじい。
さてさて、いったい89歳の母はどう読むのだろうか。