● 外資系のサーチファーム

ひと言で外資系といっても、大別すれば米国系・欧州系・アジア系の三つがあり、それぞれ人材サーチの行い方はお国柄が出る。
ここでは外資系=米国系サーチファームとしてその傾向を論じる。
まず、外資系ファームの特徴を述べるとすれば、それは「職務遂行能力」に重きを置きがちなことである。
言い換えると外資系ファームによる人材紹介では、ジョブ・ディスクリプション(職務定義書)に書き表されていない要素、例えば「人間力」のようなファジーな要素は「職務遂行能力」に比べれば明らかにプライオリティが低くなる。
公民権法が制定され、人種・年齢・性別などによる差別徹底運動が高まった米国では、人材マネージメントから属人的な要素を徹底的に排除し、「公平かつ客観的」に従業員を評価する必要があった。
客観性を保ちにくいファジーな人的要素を積極的に評価するのは、米国において非常にリスクなのである。
合理的客観性を重視する外資系ファームのヘッドハンターに「当社の社風に合った人物を探してください」などといった曖昧な要求を行い、最適な人材を紹介してもらうのは(評判が良い悪いではないが)難しいのではないかと思う。
従って、外資系ファームのヘッドハンターに人材紹介を依頼し、最大限の効果をあげようとするならば、必要人材の職務内容を可能な限り詳細に定義し、オーダーを出すよう心がける必要があるだろう。そうでなければ、結果、評判の高い人材獲得は難しいだろう。


● 和製サーチファームの場合

「日系」は国内資本であることを表す記号でしかないが、「和製」はそうではない。
この言葉は、日本人を日本人たらしめているアイデンティティに根ざした存在であることを意味する。そして日本人の「ジャパン」のアイデンティティとは、何よりも「和する心」といえるだろう。
突出した「個」の利益を追求するのではなく、組織を先んじる「ジャパン」のメンタリティが日本人には存在する。過剰な自己主張を良しとせず、謙虚を美徳とし、言外の想いを読む・・・。とでもいえばイメージしていただけるだろうか。
リストラやM&A、利益先行型の経営手法も目立ち日本企業も欧米化が進んでいるが、大局的にみれば、日本企業にはやはり日本独自の和の文化が根付いている。従って、そこに馴染むことができる人材かどうか、企業と人の相性を重視する。
これは職務遂行要件のクリアを人材サーチの第一条件にする外資系ファームと対極の立場にあると言えるかもしれない。

 私は、相性については、ヘッドハンティング・サーチファームの重要な要素だと考える。


● 相性を見極められるヘッドハンターか?

例えば、強いリーダーシップを持つトップが新しいことにどんどんチャレンジし、社員はそれを実現するスピードが求められる企業に、保守的で伝統を重んじる企業対してこそ安心感を覚える人材が入ったとしても、その人材が本来持っているパフォーマンスを発揮するとは考えにくい。
反対に、序列を重んじ、ボトムアップの変化が起こりにくい企業に、リスクテイク型でチャレンジ志向の若手人材が入社しても、その人材のモチベーションを維持することは難しいのではないか。

表計算を行うのに画像ソフトを購入する人がいないのと同様に、評判のある人材採用についても絶対に必要な要件というのはある。経験や実績、知識、語学力、資格などがこれにあたる。
とはいえ、これらの部分は本人の努力や教育で身につけることができるので、この部分のみを重視しすぎると、たった一つの要件が欠けていたために、その企業に大きく貢献し得る人材の潜在力を見逃してしまうことになりかねない。


● 候補者の理解について

実をいえば、特殊な案件を除いて、企業が望む職務要件を備えた候補者を探すことは、プロフェッショナルなヘッドハンター、サーチファームにとってそう難しいことではない。
しかし、職務要件のマッチングのみで人材の紹介を行えば、失敗する確率が高くなる。この場合の失敗とは、人材の早期退職や、その人材が天職後パフォーマンスを発揮できないことを指す。

登録型の人材紹介の場合、対象人材は登録者(転職希望者)のみであり、成功報酬型(コンチ型)という制約から案件処理数を最大化して利益を確保していく必要がある。
したがって、どうしても職務要件重視のマッチングを行わざるを得ない。

非常に難しいことであるが、職務要件や条件以外の部分で企業と人材をベストマッチさせることこそ、ヘッドハンターの力量だといえる。
その実現が評判として評価となる。