麻布十番のバーで飲んでいて焼き鳥の話になった。 ‘そういえばこのビルにも新しいところができたのご存知ですか?‘‘いいや? いい感じなの?‘ ‘まだできたばかりなんでなんとも・・・でも凄そうです‘とのこと。試しに紹介してもらいにお店を伺う。
 !? これ焼き鳥屋か? 引き戸を開けるとそこにはすし屋のようなながぁい美しい白木のカウンターがあり、なによりも焼き台がある気配がない。今度伺ってもいいですか?とご挨拶させていただき、予約を入れさせてもらう。 なんだかちょっと今まであんまり見たことない感じの焼き鳥屋だなぁ。。。
 後日伺う。座って軽く飲んでいると木箱に入ったネタの数々を持って最初に店の方から挨拶が・・あれ?ここ焼き鳥屋だよな? 本日は 比内地鶏をいくつか焼かせていただきまして、最後は栃木県の益子牛を焼かせいただきます。白木のネタケースに入った鶏・牛・野菜の数々・・これは焼き鳥屋の雰囲気ではなく明らかに寿司屋の感覚だ。
 最初に先付。比内地鶏の皮の燻製風味・うにを載せた山芋・肝をからめた煮アワビ・・どれも素晴らしい仕事がしてある。特にアワビの肝の香りをまとった味わい・食感が素晴らしい。
そのあと、なんとすっぽんのスープがもともとはひれ酒を供するような雰囲気の青磁の杯で出てきた。 いやぁ 深みのある見事なスープ。 食欲がそそられて 焼き鳥への期待が高まる。 とその後追い打ちをかけるようになんとふぐ刺し。 高知の馬路村のかぼすを絞ったポン酢を合わせて・・ 何度も言うけどここ 焼き鳥屋だよな? 酒はウイスキーソーダ割りからすでに獺祭へ・・・
 ここへきていよいよ真打の比内地鶏登場。 飲んで食べてで楽しんでいたのだが、カウンターの目の前に焼き台があって鶏をじんわり焼いていた。 しかし煙がほとんど立たないようにしつらえられており(たまにふわっと香りもするところがまたいい)最初の凛とした雰囲気はそのままだ。 
 最初は皮付きの胸肉から・・こちらの焼き鳥は串に肉が4片ついている従来からの焼き鳥とは違い、一串1片。 大将の篠田さんのお話によると4つついているとどうしても最初に食べた時と最後の1片を食べたときに時間の経過によるわずかな味の違いが出てしまうが、こうして出せばベストの状態をすべてに楽しんでもらえるのではないかと考えたとのこと。
食べてみる。  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 無言にもなる。 最初はさくっと焼き上がった香ばしい皮、そしてそのあと肉のjuicyさを見事に閉じ込めた味にも歯ごたえにも力のある比内地鶏の深い味わいが口に広がって噛んでも噛んでも旨みが出てくる。 これは無言になるわ~~~
 その後 レバー・へそ(珍しい部位)・せせり・ほるもん・ももなど一通りいただく。
どれも一串ひとつづつ。 これが塩・たれ自在の組み合わせで供され、善光寺七味・京都原了郭の 山椒・黒七味を 好みでつけていただく。 それぞれの串を食べるとそのたびに
友人との会話は中断。 鶏肉ってこんなにうまいのかと再認識。鶏肉そのものも素晴らしいんだけど、何といっても焼きの技がすっばらしい。 やばい。これは本当に鶏を知らないとだめなんだろうなぁ。  焼き手の方に聞いてみる。 天ぷらだと音を聞いてここだというポイントでころあいを見計りますけど、焼き鳥もそうなんですか?   正解は・・・・
音と脂の揺れ具合・落ち具合だそうで・・・プロの腕に最敬礼。

 こちらは食器もまた凝ったものばかりだ。若い新進気鋭の陶器作家の方からお気に入りを仕入れてらっしゃるそうでこれを見ながら食べるのも楽しい。

 もうこの焼き鳥食べた時点でプロの仕事に感服なのだが、ここで出てくるのは大田原の産地の近くの益子牛。 脂脂していなくて赤身がとても穏やかでやさしい味わいだそうで・・・ ?!??? や・・わらかいんだけど ・。・赤身なんだけど味が深いなぁ。
この牛何食ってたんだ一体?というおいしさ。 どれも量が絶妙に計算されていて、それぞれ‘もうちょっと食べたいんだけど・・・‘というくらいの少しずつ・・・

 ‘おいしいものをちょっとだけ・・・‘ というスタイルだ。。

 これはうまいわ。 最後にお食事。 高知の天空の郷というところで取れているお米だそうで、素晴らしい香りと旨み。ごはんだけでいくらでも食べられる・・・・んだけどこれに な。。。なんと・・・
生卵が・・・ まじかよ ここでTKG?これはさすがに反則だろ・・もうだめだノックアウト。 サイコーすぎる。 それにしても玉子の色が・・・なんともいえないgreenなんですけど・・なんでも南米チリ原産のアロカナという種類の鶏の卵を日本で改良生産してるんだそうで・・・これが至福の味わい。 しかもこのTKGには明太子ほかの付け合わせもついて・・ これ胃袋いくつあっても足りないよ~~~~

  いやぁ 参りました。 参りました。 完敗です。 ご馳走様でした。


 焼き鳥は庶民の食べ物でカジュアルに食べられるからいいんじゃん?という意見もあるだろう。客単価上げるためだろ?という意見もあるだろう。 しかしこのお店の食べ物への
真摯なこだわり・鶏への愛情・ほんとにうまい焼き鳥食べてほしいという心意気・食べ物や
焼き鳥の供し方・・・どれをとっても従来の焼き鳥屋にはないまったく新しく洗練されたstyleがそこにはあった。
strategy勝ち! 今後こういうstyleの焼き鳥屋が追随で出てくるのではないか?

 まったく新しいスタイルの洗練された焼き鳥屋 しの田さん。 大ブレイクの予感。

 ご馳走様でした。 予約取れなくなる前にまた来ます。