本から得た知識ってどのくらい活用されていますか?
読了直後は記憶がそれなりに残っているので、行動に活かせる部分も多いと思いますがしばらく時間が経つとすっかり忘れてしまうことって有りませんか?
私はまさにそのパターンでひどい時は同じ本を買ってしまうなんてことも有りましたがそんな自分に嫌気がさし、ブログで備忘として残すようになりました。
本書は昨年読んだ際に得るものが多かった『アート思考』の本ですが、半年ぶりくらいに読んでみたら詳細の内容はほとんど忘れてましたね笑
改めて学ぶことも多かったので、重複する部分も有りますが再度記録として残しておきますよっと。
前回の感想はこんな感じ。
「こんな授業が受けたかった! 」
700人超の中高生たちを熱狂させ、
大人たちもいま最優先で受けたい「美術」の授業!!
論理もデータもあてにならない時代…
20世紀アートを代表する6作品で
「アーティストのように考える方法」がわかる!
いま、論理・戦略に基づくアプローチに限界を感じた人たちのあいだで、
「知覚」「感性」「直感」などが見直されつつある。
本書は、中高生向けの「美術」の授業をベースに、
- 「自分だけのものの見方」で世界を見つめ、
- 「自分なりの答え」を生み出し、
- それによって「新たな問い」を生み出す
という、いわゆる「アート思考」のプロセスをわかりやすく解説した一冊。
「自分だけの視点」で物事を見て、
「自分なりの答え」をつくりだす考え方を身につけよう!
今回は本書の構成に従って、要約と所感としていきたいと思います。
1:プロローグ(自分だけの物の見方)
クロード・モネ(1840〜1926年)
睡蓮
前回も書きましたが、ここでは大人と子供の物の見方の違いが分かりやすく解説されています。美術館に行った際に
・絵を見ている時間
・解説を読んでいる時間 どちらが長いですか?
作品を鑑賞しているようでいつのまにか別のことを考えてたりしていませんか?学校教育の美術が『技術と知識』に重点を置かれていたのに対し、今、大人が学び直す必要があるのが『自分だけの物の見方・考え方=自分なりの視点』を持つことだと言われています。そのことが『睡蓮』を使い分かりやすく説明されています。
2:オリエンテーション(アート思考とは)
完全なタンポポを思い描いてみる。多くの人は黄色い花が浮かぶと思いますが、実はタンポポの根は地中1メートルに及び綿毛や葉の期間を考えると花が咲いているのは1年の内、1週間程度だそうです。
『アート思考』とはこの目に見える花の部分ではなくタンポポの大半を指す地中にある『根』の部分に興味・探求を持つことと言っています。アート=アート作品ではなく、その内側にあるものに興味を持ち自分なりのものの見方で考え答えをだす。
なかなか難しいですね。しかしVUCAの時代と言われる今、時代の変化にいち早く対応する事や他者(他社)と差別化を図るための能力がこのようなアート思考で有り、ビジネスエリートにも注目されている理由なのかもしれません。
本編以降はアートの既成概念を打ち破った6つの作品と共にアート思考が紐解かれていきます。
3:class1(すばらしい作品とは?アート思考の幕開け)
ここでは『20世紀のアートを切り開いたアーティスト』と称される
アンリ・マティス(1869〜1954年)による『緑の筋のあるマティス夫人の肖像』が
取り上げられています。
この作品を理解するためには500年ほど遡り西洋美術の基礎となる多くの技法が確立された、14世紀頃(ルネサンス絵画の時代)の背景を理解する必要があるようです。
当時の画家は教会や富裕層に雇われ職人として依頼された絵を描いており、教会からは文字を読めない人にキリスト教を広めるために聖書の世界観をビジュアル化する目的での宗教画を、富裕層を代表する王侯貴族からは権威や権力を示す肖像画が求められました。
レオナルド・ダ・ヴィンチ(最後の晩餐)
神話を扱った作品 サンドロ・ボッティチェッリ(ヴィーナスの誕生)
その後17世紀には裕福な市民が登場し、その中でカトリックの偶像崇拝に反対して台頭したプロテスタント信徒たちは宗教画を否定し、分かりやすく身近な絵画である『風景』『日常生活』『静物』などを題材にした絵が好まれるようになります。
が、その時点ではあくまでも遠近法などを活用した『目に映る通りに世界を描く』写実的な表現が正解とされていました。
しかし、その後20世紀に入りカメラが普及する事で写実的なアートに対する考え方が一変します。
そこで冒頭のマティスが『緑の〜』によってアートにしかできないこととしての答えを示した形となりました。しかしアート=写実的な美しさとする従来の評価基軸からすれば当時のアート関係者の衝撃は推して知るべしですし実際に酷評されたようでした。それが現代においては高く評価されている事実。目に映るとおりに世界を描くという目的からアートを解放した功績はとても大きいと言えますね。
4:class2(リアルさとは?目に映る世界のウソ)
ここではリアルを追求した史上最も多作なアーティスト、パブロ・ピカソの『アビニヨンの娘たち』を中心に解説が進みます。
初めて観た人は『なんじゃこりゃ?』と思うと思いますが、安心してください笑
こちらも発表当時は『酷い絵』と非難されたそうです。
しかしこの絵は遠近法による矛盾点である1つの視点から見たリアルな世界に対して、『様々な視点から認識したものを1つの画面に再構成する』というのがピカソから見たリアルだったようです。キュビズムと言われています。確かに今自分が見ているものは視界に入るその面しか無く、裏側がどうなっているかなんて考えたことも無かったですね。(ましてやその視点も1枚に納めるなんて)
5:class3(アート作品の見方とは?)
ここではいよいよアートの見方についてです。
混雑する美術館で絵を眺める人達を見て、『どんな思いで鑑賞しているんだろう?』と考えたことありませんか?
こちらはワシリー・カンディンスキーの『コンポジションVII』という作品です。
一見何が描かれているか分からない作品ですが、実際に何も描かれていないんですって。西洋美術史上初の、抽象画だそうですよ。そんな絵に対面した時は『アウトプット鑑賞』です。具体的にはこんな感じ。
1:主観的に感じた『意見』の根拠となる『事実』を問う
2:作品内の『事実』から主観的に感じた『意見』を問う
アートはついに『具象物』すら描かなくなってしまいました。
6:class4(アートの常識とは?)
さて、後半ですがここではアートの常識、『ARTとは美しくあるべきか?』についてです。
こちらはマルセル・デュシャンによる『泉』という作品です。男性諸君は見た瞬間に小便器に似ているな・・と感じたことでしょう。実際に小便器をひっくり返したものだそうです笑
しかしこれはアート界に最も影響を与えた20世紀のアート作品の第1位に選ばれたようです(2位は前述のアビニヨンの娘たち)
この作品が生まれた経緯や当時の世論は本書を読むと良いと思いますが、想像通り大変な騒ぎだったようです(悪い意味で)。ただこの作品によってアートの枠組みがある意味において無くなり、結果現代アートの表現の幅が大きく広がったと言えるのだと思います。それにしても小便器のタイトルが『泉』とはセンスがありますね笑
7:class5(私たちの目には『なに』が見えている?)
ここではジャクソン・ポロックについて。
この作品では『アートにしかできないことはなにか?』への答えを出したそうな。
ここでわかることは物質である絵の具やキャンバス。ポロックは鑑賞者の目を『物質としての絵そのもの』に向けさせることでアートが『なんらかのイメージを映し出すもの』という役割から解放したことが功績とされています。
8:class6(アートってなんだ?)
アートの常識を覆した6つの作品の最後はアンディー・ウォーホルによる『ブリロ・ボックス』です。
こちらは(確か)クロのTシャツになったりしているのでご存知の方も多いと思いますが食器用洗剤の箱です笑
箱がオシャレなのでアート作品に見えますけどね。公表した時は大量の木箱にこの絵柄をプリントしたものを貼っただけなので『アートではない!』の主張も大変多かったようです。しかも本人もこれを作った理由を『簡単だったから』と言ってのけ、アートとして認めてもらわなくて結構の姿勢でした。しかし本人が否定すればするほど、何が何でもアートとして認めたい層が現れるんですよね笑。不思議なもので。
ただの木箱にプリントを貼る作品を『初めて』作ったことに大きな価値があったということになるんですかね。物理的な技術ではなく、発想そのものが『ART』だった事例になるのでしょう。
以上のようにアートとは自分がアートと言えば(評価されるかは別として)アートになるし、周囲の勝手な解釈で本人の意図とは乖離してアートの評価を受ける場合もある。それが現代アートの醍醐味と言えるのかもしれません。
そんな現代アートの面白さが一通り学べて、読み終わった後にはにわかアートファンになれる。とても有益な1冊だと思います。