【作品情報】


『哭声/コクソン』のナ・ホンジン監督が原案とプロデュースを務めたホラー。『愛しのゴースト』のバンジョン・ピサヤタナクーン監督がメガホンを取った。



【あらすじ】


祈祷師一族の若い女性ミン(ナリルヤ・グルモンコルペチ)が原因不明の体調不良に見舞われ、まるで人格が変わったかのように凶暴な言動を繰り返す。母親ノイ(シラニ・ヤンキッティカン)は自分が一族の新たな後継者として女神に選ばれて憑依された際と同じだったため、祈祷師である妹ニム(サワニー・ウトーンマ)に継承の儀式を頼む。やがて、彼女はミンのために祈祷を行うが、彼女に取り憑いていたのはニムの想像を遥かに凌ぐ強大な存在だった。



【感想】


映画ファンが考察で大盛り上がりしているので観てきましたが、ホラー映画史に残るでしょうね。ネタバレを全く気にしなくて良くなったので考察を読んで観賞後も楽しんでいますが、ニムの死について「姉に継承権を押しつけられたことを知り、女神バヤンを信じきれなくなったから」「いや、ニムに取り憑いているものが強すぎたのでは」と書いている人の多さが本作の凄まじさを証明しているように思います。




冒頭でニムの「ガン患者は治せない。わたしが治せるのは原因不明の時だけ」といった言葉に頷いていた観客は、その後に立て続けに彼女の祈祷と死を見せられていたら、「何日も食事を抜いてあれだけ雨に打たれたのだから」と考えていたでしょう。しかし、本作を観た後にはもう人ならざる者の力が働いたようにしか見えなくなっているのです。劇中の撮影クルーと共に土着信仰を画面越しに興味深く観察していたのに、いつの間にか呪いの只中にいるかのような感覚に陥るのを止められません。




儀式も知らなかったのに、ノイが線香を逆にしただけで煽られる絶望感。悪霊は人や動物を喰らってその怨みをも呑み込んで(観客の中で)肥大化し、本作が観客を振り回す勢いも遠心力を吸収して加速していきます。本作がさらに恐ろしいのは、布教目的で製作されていない(本作を観て入信する人はまずいないでしょう笑)ものの、多くの人に霊の存在を感じさせていることです。本作はたくさんのクリエイターに影響を与えるでしょうが、悪用されないよう祈ります