谷口選手は前年の東京世界選手権優勝で金メダル候補。
20キロ過ぎの給水所で谷口選手がボトルに右手を伸ばした瞬間、左後方から来たモロッコ選手と交錯した。左足かかとを踏まれてバランスを崩すと、巻き添えを恐れた後続選手に5メートルも突き飛ばされた。

42・195キロを走り終えた谷口選手は、照れ笑いで淡々と言った。「途中で、こけちゃいました。」
このインタビューを聴いて何故か「涙」が出てきました。
何故なのか?オリンピックを目標として練習を重ねせっかくの舞台で人に足を踏まれたせいでいい成績を残せなかった・・・しかし彼は少しも悪びれず、誰のせいにもしなかった・・・それが嬉しくての「うれし涙」だったんでしょうね。
あのインタビューを聴いて涙を流した人はいませんか?
谷口選手は続けている。「よく頑張った」と思うのは転倒を知っているから。知らなければ「何をやってるんだ」と思われるでしょ。だから、転んだことを言い訳にした。笑顔に見えたのは、レース直後だからじゃないかなあ。走り終わった時は、いつもあんな顔をしてますから。
もし足を踏まれなければ、転倒しなければ、靴が脱げなければ…。しかし、谷口選手はそういう考えをきっぱりと否定した。
谷口選手 不運や失敗の連続だからこそ、マラソンはおもしろい。それを次に生かして強くなるんです。「こけちゃいました。」は、結果的に谷口浩美の名前を有名にしてくれた。マラソンも注目された。だから、よかったですよ。ただ、銀メダルの森下には悪いことをしたと思います。本当は、彼がヒーローなんですから。
51歳になった谷口は、最後まで明るく、さわやかに20年前を振り返った。現在は東農大陸上部のコーチに就任。失敗を怖がらず、失敗を糧に強くなれる選手、前向きに「こけちゃいました」といえる選手の育成を目指して
頑張って下さい。