お客さんの中には、「うつ病」で通院している人もいるし、その予備軍と思われる人も多い。
なぜ「うつ病」とカッコに入れて書くかというと、現在は古典的な内因性うつ病じゃなくても「うつ病」と診断されている人が多いから。
古典的にはうつ病は内因性疾患、単純にいうと「脳の病気」であって実は「心の病気」ではない。でも近年は、適応障害やいわゆる神経症(ノイローゼ)、パニック障害、パーソナリティ障害、解離性障害などの心因性疾患(心の病気)であっても、抑うつ症状があれば全部ひっくるめて「うつ病」と診断されている場合がある。
これはあながち誤診ともいえなくて、実はうつ病の定義や診断基準が数十年前といまとでは大きく変化したから。これは長い話になるのでまたいつか書こうと思う。
さて、「うつ病」とアルコールとの関係。僕の経験や人から聞いた話では、精神科に通院してもアルコールはそんなに厳しく禁止されない。酒を飲むと薬の効き目が変わってくるという話もきくが、医者はせいぜい「お酒はひかえめに」とか「飲みすぎないように」と言う程度。でもこれがけっこうクセモノだったりする。
「うつ病」になってから酒を飲み始めたという話はあまりきかない。もともと飲酒癖のある人が「うつ病」になるパターンが多い。
でもこれは僕の素人考えだが、必ずしも飲酒が「うつ病」を引き起こしたというわけではないように思う。飲酒の習慣がある人は、気持ちが塞いだときはどうしても量が増える。アルコールにはやっぱり抑うつ効果があるから。でも酒は増える一方なのにいつまでたっても気持ちがすぐれず、これはおかしい、耐えられないと自覚するようになって人はようやく精神科のドアをたたく。
僕は別の理由から、「うつ病」になったら酒をひかえたほうがいいと思っている。一日にビール1本とか自分でルールを決めて守れるならそれでいい。でもそれが無理なら、いっそ一時的に断酒したほうがいい。
理由はとてもシンプルだ。
「うつ病」で気持ちが沈んでいるのか、単に二日酔いでしんどいのか、自分でも区別できなくなるから!
たとえ毎日二日酔いであっても、医者にはたいてい「そんなに飲んでません」とひかえめに申告する。症状が改善されないなら医者は何も知らずに薬を増やす。結局「酒の飲みすぎ」と「薬の飲みすぎ」のダブルパンチで、悪循環におちいるハメになる。
通院しているいないにかかわらず、うつモードに入っているお客さんには「とりあえず1週間でいいから断酒してみたら」とすすめることがある。それで案外、憂うつな気分があっけなく改善されるかもしれない。いったいどこまでが病気による憂うつ感なのか、自分を知るきっかけにもなる。
こっちは酒を売るのが商売なので、当然ながら断酒なんてすすめたくない。でも人が転落していくのに加担はしたくない。毎回ちょっとずつお金を落としてくれたらそれでいいから、末長くお客さんでいてほしいのである。