小学5年生だった俺が、1歳上の兄とそろばん塾に一緒に通ってた頃。
近所にあるお店は「アサヒヤ」。 地元では駄菓子屋の一流ブランド店だ。
“いつか駄菓子を腹いっぱい食べてみたい”
ある日、ついにその野望が叶う。
塾が終わった直後、得意気に五千円札を兄に見せた。
大金に驚いた兄だが、誘われるがまま「アサヒヤ」直行。
小学生が駄菓子の大人買い。
とにかく無我夢中で買いまくった、俺も兄も。
だが、偶然にも、塾に迎えに来た両親の車を発見してしまった。
俺は青ざめた顔で兄に報告した。
選んだ商品を置きっぱなしのまま、兄は店を飛び出た。
パニックだった俺、なぜか五千円も一緒にレジに置いて兄を追った。
俺達を探す親に近づき、何事もなかったように車に乗り込む。
間一髪・・・と思うのも束の間、アサヒヤの親父が全力疾走で向かってきた。
置いてきた五千円を返そうと走ってくる姿が、俺には大迷惑だった。
親父の力走空しく、車は気付かず走りった。
きっと、どの映画にも勝負できるくらいのカーアクションに思えた。
結局、野望は朽ち果てたが、せめての救いは
五千円窃盗事件が明るみにならなかったことだろう。
20年以上経った今、謝りたい。
被害者である母親に。
