大みそかの紅白歌合戦とともに

元旦恒例のウィーンフィル・ニューイヤーコンサートを

観ました。

 

今年の指揮者は、イタリアのリッカルド・ムーティ

 

このイタリア人がどんな選曲で、どんな指揮をし、

どんな表現をするのか興味深々でした。

 

というのも、私の個人的な印象ですが、ムーティは、

あのカラヤンの影響をかなり受けていて(!?)、

音を鋭く歯切れよく運び、高速でも一糸乱れぬ正確さを

保たせる・・・・オケにそんな要求をするマエストロだと

思ってきたからです。

 

男性的で完全無比、演奏の完璧さを求める指揮者だと。

 

それは、ウィーンフィルではなくベルリンフィルにあてはまる

演奏哲学ではなかろうかと考え、このコンサートを

どうコントロールするのか不確定要素があったため、

そういう意味で楽しみにしていました。

 

しかし、私が頭で考えていたムーティの指揮は、

全編を通して聴くと、その予想を裏切られることになりました。

 

もちろん、いい意味で。

 

曲によって、表現を巧みに変えていたのでした。

 

70歳代半ばになったムーティの熟練の賜物なのでしょうか?

 

ウィーンフィルの良さを存分に引き出していました。

 

例えば、オーストリア・ハプスブルク帝国時代の

シュトラウスファミリーの音楽遺産、『ウィーンの森の物語』と

毎年奏でられる『美しき青きドナウ』。

 

後者なんかは、イントロのピアニッシモの音が素晴らしかったです。

 

どんなに小さな音でも緊張感に溢れ、その静かな輝きが

会場の隅々まで届く。まるで、ドナウ川の穏やかな流れにのって、

船上から両サイドの丘を越えて空まで、ゆったりと静かな音が

立体的に広がっていくような世界に引き込まれていきました。

 

これぞ、ウィーンフィル! だと思います。

 

ムーティも、世界一二を誇るオケと共演すれば、

こんな芸当ができるんだと感じました。

 

この2曲は、素晴らしい音の広がりと調和を

聴かせてくれました。

 

でも、ムーティの真骨頂、素早いタクトさばきで

高速テンポを正確に操る業も見せてくれました。

 

電光と雷鳴』や、毎回アンコールとなる

ラデッキ―行進曲』では、この業が光りました。

 

高速テンポを操作する指揮には恐れ入ります。

 

一糸乱れぬところが世界最高峰の指揮と演奏

なのでしょうね。

 

思わず唸らせてくれる技術と心意気には

感動しました。

 

このように2つの場面展開を見事なまでに

繰り出してくれたムーティの芸術性も素晴らしい、

と思いました。

 

熟練したイタリア人だからできるのでしょうか?

 

そのあたりは不明です。

 

ただ、彼は、ここ十年くらい、世界各地で

反戦をテーマにしたコンサートを繰り広げてきた

と聞きます。パレスチナで、イランで、・・・

そんな社会的な使命も抱えてきた人間性が、

今回の素晴らしい演奏につながったのではないかと

考えています。

 

来年は、ティーレマンの指揮だそうで、

またまた楽しみです。