今年元旦のウィーンニューイヤーコンサートで

タクトを振った男、ベネズエラの若手指揮者デュダメル

 

今のりにのっているクラシック界の若きホープですが、

彼が指揮するベートーベンの交響曲3番を聴いてみました。

 

3番は、ご存じのように、あのナポレオンを讃えるために

創られたシンフォニー『英雄』です。

 

それまで、古典派に属してきたハイドンやモーツァルトが

創った交響曲に構成と音の厚みを持たせた、

本格的なシンフォニーをベートーベンが確立した作品だとも、

言われています。

 

第1楽章は、彼らしく、重厚でスケールの大きさを

感じさせてくれます。ソナタ形式で、躍動感もあります。

 

これを指揮台の上で、前後左右に身体を躍動させて振る

デュダメルには、ぴったりの曲だと感じました。

 

厚みのある音の連鎖に躍動感が宿るまさにそんな感じなのです。

 

しかし、それだけではありません。

 

第2楽章は、物静かですが、荘厳な葬送行進曲風。

躍動というよりも、静けさの中に、芯のある音が

連なりあった曲想にデュダメルは仕上げています

 

まさにベートーベンの意図をしっかりと見抜き、

体現しているように感じました。

 

深みのある本格的な交響曲! という世界なのです。

 

何度聴いても飽きることがなさそうです。

 

こんな風に

彼の創り出した曲想と実によく似ていると思われる

指揮者が過去にもいるなぁと感じていました。

 

それは、イタリアのクラウディオ・アバドです。

 

彼も1音1音に重みを持たせながら、それで歯切れが

いいんです。アバドの3番もとても好きです。

 

強く演奏する音ならいざしらず、弱く演奏する

(ピアノやピアニッシモ)音にも、芯があり、

深みが増していくんです。

 

これが指揮者の力量ではないでしょうか?

 

そういえば、アバドもデュダメルも指揮者としては、

従来の伝統を革新する芸術家という共通項が

ありますね。当然賛否両論もあるようですが、

要は肝心なのは、この曲なら何を主題にし、

どういう曲想にするかが大事で、その解釈の違いが

出ているのだと思います。

 

まだまだデュダメル指揮の演奏をそんなに

聴いたわけでじゃありませんので、それは、

今後の楽しみにとっておこうと思います。

 

とにかく、本人の本意ではないと思いますが、

奇抜な仕上げになるケースもありそうですから。

 

彼がカラヤンのように世界中のクラシックファンの

心をとらえる曲を披露し続けるのであれば、

変革も意義をなすものと思われます。

 

新たなクラシック界の”英雄”が生まれる

かもしれませんね。