米ツアーのツアープレーヤーズ選手権(TPCソーグラス、
フロリダ)で、ドイツのマルティン・カイマーが優勝を
飾りました。最終日、途中まで優勝一人旅かと
思いきや、そう簡単にはいきませんでした。
カイマーは、マスターズ2勝のあのベルンハルト・ランガー
と同じドイツ人です。堅実でしぶとい、最後まで
勝負をあきらめないゲルマン魂の持ち主
なのでしょうか?
彼のゴルフには、そのゲルマン魂の他に
試合の局面で見せたメンタルが垣間見えました。
カイマーは、3年前には、ワールドランク1位に
躍り出た実力者です。その彼が、以前ほど
ブレークできなくなったのはなぜか?
その真相は不明ですが、彼のゴルフスタイルに
よることも大なのでは?
ドイツ人らしく慎重で堅実。あまり冒険はしない
タイプと見え、確率を重視したいゴルフには
ぴったりな性格だと感じました。
ゴルファーには慎重派と勇猛派がいるとすれば、
彼は間違いなく慎重派です。
でも、慎重派の落とし穴は、慎重になり過ぎて
臆病にプレーしてしまうことだと思います。
実際に彼の最終日、2位に4打差以上つけた
時点で、ゴルフがおかしくなってしまいました。
堅実にプレーしようとしたせいか、パットが
ショートのオンパレードで、パーどころか
ボギーが続きました。
ここがゴルフの難しいところです。
慎重→臆病の精神状態に陥ると、
超消極的なプレーになりがち。
安全に安全に行こうとして、
逃げのゴルフで切り抜けられるほど、
TPCソーグラスは甘いコースでは
ありません。
これが端的に出たのは、あの17番ホール、
アイランドグリーンのパー3です。
右サイド一杯に切られたピンに対して、
彼の攻めたルートは、グリーンセンター半分より
手前でした。通常で考えれば、安全・確実な
ルートでしょう。
しかし、この安全ルートは決して安全では
ないのです。
ピンをデッドに攻める方が
安全だっていうケースになることも多い
ホールです。
そんなことを分かっていながら、やはり
セオリーどおりの安全策。
これが、とんだ
結果になりました。
ショートアイアンでも
スピン量の多い高いフェードボールを
打つカイマー。
ボールはグリーンセンターより手前に
着弾し、バックスピンがかかって、
戻り、あやうく手前の池に落ちるところ
だったのです。
運よく、少し伸びたカラーに
助けられ、ボールは間一髪、止まりました。
雨で少し湿ったグリーンでなかったら、
スピンで勢いのついたボールは
池にドボンだったでしょう。
ここは、
幸運だったといえると思います。
勝つには、運も必要なんですね。
ところが、ドラマはこれでは終わりません
でした。
カラーからウェッジで寄せた
ボールは、ピンの切られた
下の段まで転がらず、上の段で
止まってしまったのです。
ここでは、彼の慎重さが裏目に
出てしまいました。
下り傾斜によって
オーバーしすぎないように注意した
せいで、雨で湿った転がりの悪い
遅くなったグリーンに妨害されたのです。
パーパットは、下りスライス、6~7m
だったと思います。
ここで、今度は彼に幸運が訪れます。
めぐりあわせの幸運といって
いいでしょうね。
フェード打ちの彼は、スライスラインを
苦にしないはず。これが、ドローや
フック打ちの人なら打つ前から苦手意識で
イメージが出なかったかもしれません。
2度もミスしたホールで、彼は、このパットを
1回で沈め、ナイスパー!
こんな勝負の綾もあるんですね。
幸運→不運→幸運と展開し、
最終的には
優勝をさらうことになるのです。
勝負の神様は複雑な計らいを
するものなんですね。
運とひとことで片づけることも
できます。
同伴プレーヤーの
ジョーダン・スピースが、ピンを果敢に
狙ったゴルフと対照的でした。
首位を走り、それを守りたいから
手堅いゴルフをしたといえなくも
ありません。
でも、このプレーは、彼のスタイル
だと思います。
技術や飛距離も
さることながら、彼が勝てたのは
自分のプレーを
貫き通した報酬なのでしょうか?
もちろん、運も味方しています。
勝利の女神だけは、どこにどうやって
輝くのかは、誰も知る由は
ないのでしょう。
彼の性格とプレースタイル、それに
勝負の綾が見えた試合でした。
結末はいつも分かりませんが・・・。