前回の『ドライブ・マイ・カー』感想に書きそびれたことがある。
それは、原作の村上春樹作品、というよりはあの独特な、それゆえに人々を魅了する
「春樹ワールド」が映像でも損なわれることなく表現されていたことだ。
もちろん、人それぞれの受け止め方があるので
そうは思わなかった方もいるだろう。
映画や芝居は、それを観る人の精神状態、健康状態によって感想が異なるものだ。
このことについては、改めていつか書きたいと思っている。
今回は『ドライブ・マイ・カー』以前に観た映画の中から
感動した作品を紹介するつもりであったが
ロシアのウクライナ侵攻の非道を知るにつけ
映画の話をのんびりしている場合ではないと思い、
現在進行中の戦争について思ったことを書いてみることにする。
ロシアのウクライナ侵攻を聞いて真っ先に頭に浮かんだのがジンギスカンであった。
領土拡張のために侵攻、侵略を重ね、元として中国を統一、その後高麗を属国にしたモンゴル人の元祖であるジンギスカン。
今、プーチンが行っていることはジンギスカンや朝鮮を侵略しようとした豊臣秀吉がやったことと少しの変わりがない。
ま、ジンギスカンの場合は元を築くまで相当な年月が経っているのでジンギスカン自身が狂っていたとは言い切れないが、
豊臣秀吉の場合は狂気にとりつかれていたと言っても過言ではあるまい。
豊臣秀吉にしても、ヒットラー、スターリンなど独裁者と呼ばれる無謀なことをする特殊な権力者は狂者である。
狂気にとりつかれているから常軌を逸したことが普通になるのだ。
プーチンが今回のウクライナ侵攻の理由とした「8年間に渡るジェノサイド、ゼレンスキー内閣のネオナチ化」は
政治や海外情勢に疎い私が考えても???である。
これだけインターネットやSNSが普及しているのに、この8年間、ウクライナでジェノサイドが行われているというニュースは
見たことも聞いたこともない。
ユダヤ系であるゼレンスキー大統領がネオナチになることはありえない。
としたら、そういうことを真剣に考えている方が狂っているのだ。
私の中では今やプーチン=豊臣秀吉である。
また、ジンギスカンもさることながら侵略者としてのアレキサンダー大王を思えば
彼らと同じことをしているプーチンの時代錯誤に呆れる。
同時に人間の進歩の無さに情けなくなる。
そして、数百年、千年近い時代の差はあろうとも
戦争で犠牲になるのはいつの時代も民なのである。
核の使用、第三次大戦になれば地球が滅亡するのは必至である。
そんな当たり前のことがわからないのはやはり狂気だ。
認知症で母が狂ったと実感した時、私の心をよぎったのは
狂気を装ったハムレットに「尼寺に行け」と言われた後のオフィーリアの独白であった。
「ああ、あの気高いお心がこうも無残に。(中略)ああ、つらすぎる。以前のあの方を見た目で、今のあの方を見るのは」
そして、泣いた。
ロシア国民の多くがそう思っていることを願ってやまない。
そしてプーチンから狂気が消え、理性を取り戻すことを。