世界の基軸通貨はいわずと知れたドルですが、ここのところ精彩を欠いています。ユーロの台頭、新興国の高度成長など世界経済が大きく構造変化を遂げる中で、サブプライム問題の深刻さがドル離れに拍車をかけています。

いったいこの先ドルはどうなるのでしょうか。見通し私見を展開してみます。

ドルの行く先を占うポイントは次の3点かなと思います。
第一はアメリカ自身の経済再生の可能性です。世界最大の経常赤字(資金不足)を海外からの資本流入で埋め合わせるといった「資金循環サイクル」をこれまでどおりに上手く機能させることが出来るか否かです。これまでの10年ぐらいはITといった先端情報技術が経済を活性化させ、世界の投資資金を引き寄せてきましたが、新機軸を打ち出せるかどうかです。サブプライム問題の余波でどの程度経済が疲弊しているかによりますが、時間がかなりかかるような気がします。

第二は中国の人民元の切上げの動きです。北京オリッピックを前に、輸出主導型の経済から内需型の経済へのシフトを急ぎたい中国は、輸出の腰を折りかねない人民元の切上げを出来るだけ先送りしたいところです。かといって人民元の切上げに後ろ向きでいると、取り返しのつかないハイパーインフレが待っています。このところの政策スタンスは、インフレ抑制に傾いていますので、人民元の切上げにやや踏み込んできた感があります。本題であるドルは、その分減価する要素を含み、基軸通貨の座布団から、少しお尻をずらさざるを得ないといったところです。

第三はヨーロッパ諸国のインフレ抑制がうまく進むかどうかです。通貨価値というのは、長期的には各国通貨の購買力の相対比で決定されます。ということは、インフレ率(物価上昇率)が低い国の通貨の価値が将来的にアップするということです。ヨーロッパ諸国が、インフレを上手くコントロールしながら、2~3%台の成長を維持していけば、ローカルカレンシー「ユーロ」からの脱皮も現実化すると思います。サブプライム問題により、各国中央銀行は、利下げや信用供与を進めていますが、利上げへの転換のタイミングを誤らないことが最大の鍵となります。

以上のポイントでドルの先行きを見ていくことになりますが、ネガティブな言い方をすると「ドルが基軸通貨として世界に君臨する時代」はとうに過ぎたと言い切れる段階に一歩足を踏み入れた気がします。やむを得ずの基軸通貨ドルが暫く続き、ユーロ、人民元がその座にジワリジワリと上がっていくのかなと勝手に想像しています。