食事の帰りに、うどんさんが話しかけてくれるようになってからすぐくらい、確か日曜日か、休日だったと思います。
私が旦那と部屋でいろいろ話していると、
コンコン
ノックする音がして、なんと、うどんさんと若い女性が入ってきました。
食事の帰りに一言二言交わすくらいしか話したことがなかったので、私はちょっとびっくりしました。
うどんさんは、
「あのさ、家に外泊してきたから(外出だったかも
)、そのお土産」

プレゼントのようにラッピングされた物を持ってきてくれました。
「これ、娘なの」
娘さんも、にこにこしながら
「こんにちは」
うどんさんは、
「病室の前通るとさ、名前が見えて、うちの娘と名前が一緒なのよ。字もまったく一緒でさ、なんかほっとけなくて、よかったら使って」
手で受けとることが出来ない私のところに、ぽんと置いていってくれました。
喉にも何か埋め込んであって、寝たままの車椅子、体も全然動かなさそうな私の姿を見ていて、そんな私に一番に話しかけてくれただけでも勇気がいることだったと思うのに、お土産を買って部屋まで持ってきてくれるなんて、どれだけ勇気がいったことか。
普通なら目を背けてしまうと思う。それなのに、自分から歩み寄ってきてくれるなんて。
私はすごく嬉しくなりました。そしてとてもありがたいと思いました。
うどんさんは、それだけ言って出ていきました。
プレゼントの中身は、とても綺麗な巾着袋でした。
うどんさんは、食事の時はいつも、食堂の真ん中の辺りで、いつも面白いことを言って、周りの人を笑わせていました。
この出来事がきっかけで、私は、席は遠かったものの、うどんさんの笑い話に一緒に笑うことが出来るようになりました。うどんさんの言うことに私が笑っていると、周りの人に、
「ほらー、向こうでも笑ってるよ
」

と言ってまたさらに笑ったり、遠くからでも話しかけてくれたりしていました。
まだまだ量は食べられなかったし、手が動かなくて、こぼしてしまったり、いろいろなことが出来ないことは恥ずかしい気がしていたけれど、うどんさんのおかげで、食堂に行くのがとても楽しみになりました

うどんさんのおかげで、食事が終わって部屋に戻る患者さんのほとんどの方たちが
「ちびまんじゅうちゃん、おはよー」
「ちびまんじゅうちゃん、頑張ってるね」
など、毎回話しかけてくれるようになりました。