せん妄状態から目が覚めると大幅に回復しているところがありました。
一度目のせん妄から目が覚めた時は、二重に見えていた目が普通に見えるようになっていました。
二度目のせん妄から目覚めたときには、右腕をお腹の上まで持ち上げられるようになっていました。
しかし、旦那をはじめ、みんなから毎日のように言われていたこと、それは
「(喉のところを指差して)ここがとれないとダメだぞ
」

それまでの私は人工呼吸器に頼りっぱなしの呼吸。
自分では呼吸できていませんでした。
自発呼吸が出ると人工呼吸器と繋がっている機械に赤いマークのようなものが出るとみんな言っていました。私からは見えなかったけれど。
足のリハビリの先生からも毎日、
「ちびまんじゅうさん呼吸して
忘れてるよ
」


私は大きく口を開けて、すーっと息を吸って、唇をとがらせて、ふーっと吐き出す、それを繰り返すと、
「そうじゃないよ、呼吸ってね、吐くほうを長くするの、そうするとたくさん吸えるから。そんなに深呼吸みたいにじゃなくていいよ」
旦那が面会に来たときも、
「おまえ、呼吸の練習しろよ
ここ(喉の呼吸器)がとれないと
」


私、またやってみる。
それを見た旦那は
「もっと何気なく軽くやるものだよ。やってみな」
私、またやってみるけど、
(えっ
これをずっと続けるのが呼吸
すごく疲れる
続けられない…それにこれをしながら話すとか出来ないし)



自分が今までどんなふうに呼吸していたのか、意識もしないくらい普通に出来ていたことなのに…
私どうやってたんだろう…
呼吸の練習を少しするだけで、呼吸しているはずなのに苦しくなるくらい疲れました。
旦那も他の人も、みんなこんなに大変なことを普通にやれてる、水だって飲めるし、食べ物も食べられる、私とは違う…
私も早くそっち側にならなくちゃ…
この時の私は、自分が本当にまた自発呼吸が出来るようになるのか、とても不安でした。
それからの私はなるべく1日、呼吸の練習をするようにしました。
苦しいけれど、疲れるけれど、とにかくやらないと。
うまくリズムに乗れるようなとき、全然できなくて今日はいいや、と休んでしまう日、いろいろありました。
「がががーーー、ぴーーー、
がががーーー、ぴーーー
」

週末泊まりに来てくれていた旦那は、仕事と育児、そして私のことで疲れきっていて、いびきをかいていました。
夜、まだよく眠れなかった私は
そうだ
このいびきで練習しよう


旦那のいびきに合わせて、
すーーー、はーーー、すーーー、はーーー
なんだかとてもやりやすくて私はそのまま眠ることができました。
私はこの大学病院での入院の後、リハビリをするためにリハビリ病院へ転院することになっていました。
リハビリ病院への転院の条件は呼吸器を外せていること、でした。
そして転院できる期限などもあり、それは間近に迫っていました。