現代(いま)に生きる日本舞踊の世界
 ~なごやに<創作と古典>の息吹を~

【その4、創作とは何か】
本日は「なごやに創作と古典の息吹を」というお題でした
創作舞踊という言葉は近年のものですが、創作と振付はどう違うのか。 なかなか難しい判断で私達も迷います。
皆様はどのように思われますか?

自論ですが日本舞踊の場合「振付」は既にある、又は用意された唄や曲に、その歌詞や作品の趣旨に従って振付をすること
「創作」は私自信の想いや感じ方、大上段に構えて時には自分の哲学で、全てを選び創りあげたもの、平たくいえばつまり私の自分勝手な作品です。
日本舞踊は伝統芸能ですから、古典はとても重要です。先人から受け継いだ作品を次代に繋ぐ、大切な事です。
でも、古典も生きていますから、日々変化していきます。


【その5、では何故 創作が必要か】
ここからは 私のリサイタルを引き合いに出しつつ話を続けたいと思います。
世間知らずで、ただワクワクと初めてみた創作中心の私のリサイタル、私の創作活動は「私の恋のおどり」からはじまりました。
30代に入って、お弟子も増え、毎日毎日 古典舞踊を教えていました、そう、その頃私はどっぷり 古典に浸っていました。
先人達が、演目によっては 江戸時代から、長い間手塩にかけて 育んできた作品達です。優れた古典舞踊は 踊っている本人の心も清く洗われ、清々しい
気分になります。私は古典舞踊が大好きです。

しかし当時 古典舞踊を研究、先人達の教えを護ろうとするあまり、私はあるジレンマに陥っていました。
日本舞踊の花形は女役で、お弟子に若い女性の多い我が家は、ご多分に洩れず発表会の折には 美しい娘役がどっと並びます。
恋の娘役を並べてみましょう。
櫓のお七では火あぶりの刑となったお七のお相手は、吉三様(吉三郎が指に刺さった刺を抜いて貰おうと初めてお七に出会ったとき、目のしほの その底知らぬわだつみに 我はおぼろの月や君)。
浪花は瓦屋橋、油屋の一人娘・お染は子飼いの久松(お光という許嫁があります)、
お染久松は坪内逍遥の新舞踊論の代表作品の一つ。
お夏狂乱、愛しい人が冤罪で処刑され、哀しみで狂い歩くお夏の恋は清十郎殺さばお夏も殺せとひたすら哀れ。
叶わぬ恋の道成寺、清姫の想い人は修行僧・安珍様、思いが叶えられなくて殺してしまった。
本朝二十四孝では武士の娘八重垣姫は武田勝頼様の許嫁…窮地を助けんと諏訪明神に仕える狐に乗って、凍った諏訪湖を勝頼様のもとへ…
どの娘も皆さん、大変な人生を送った、凄いエネルギッシュな娘たちなのです。
どっぷり古典に浸っていた私としては、作品のできた背景や、主人公の生い立ちなど調べ、らしくらしくとその主人公らしい恋の踊りを望みました。
しかし、次第にもやもやが発生し、ある時突然爆発! そう、私は私の恋心を踊りたいのだ!! 古典の娘たちのような思い恋ではなく今生きている生身の私がする恋を!! と激しく思いがこみ上げてきました。
当時30前、全く、娘っこらしい発想です

数年の内に良い機会を得て、第1回目のリサイタル公演を開催することとなりました。昭和56年の初夏の事でした。
私のご機嫌の作品は「薄墨の桜」といいます。岐阜県根尾の薄墨の桜の話を作家の宇野千代先生が書いていらして題名を「薄墨の桜」と云いますが先生
のその「薄墨の桜」に出会い、発想したものです。
ご存じのお方も多いと存じますが、お能「花がたみ」にあります桜は越前・大野にあります。二つの櫻をお手植えしたのは継体天皇といわれています。
その桜の物語です。私が自分の好みで自分勝手に作り上げた作品第1号です。
桜を美しいと愛でて下さった継体天皇に思いを寄せた桜の精の物語です。
自分を桜の精に見立てて、私の、生身の私の恋心をぶつけた作品です。
山路曜生リサイタルにて「傘の内」(山路曜生・五條園美)

創作舞踊家の大先輩・山路曜生先生が「薄墨の桜」の冠に「創作」とつけて下さいました。
あれから30年、1度だけのつもりのリサイタルが、本年24回を迎えました。我ながら感慨深いです。
山路曜生先生は、金城おどりの演出・振付を40年ほど手がけて下さった方です。ひょっとしたら名古屋でただ一人の創作舞踊家ではないかと思います。
私も子供のころからずーっと金城おどりに出演していましたので、山路先生の影響を多いに受けました。五條流の流風と山路先生の近くに居たことが私の創作活動を続け得られた要因だと思います。

○創作をしますと、筋書き・時代考証・音楽・美術などあれやこれや思い・考え、迷い、そして振りを付け、踊ってみて、又直し・・・苦しみ・・本当に良い勉強、逃げ出したい程の勉強をします。
古典を踊る折、その勉強がどれほど役に立つことか!古典とのかかわり方が変わりましたね
それと、実は、ここだけの話ですが、創作作品の発表というと、マスコミの方々が採り上げて下さるしお客様も多いのですよ!
門下の中で、ある程度の種類の古典を覚え、やる気のある人には、創作する事を勧めています。日本舞踊をもっと高める為に、もっと面白くする為に。
古典がすごーく上手になるのを待ってからでは遅いのです。若いうちから始めさせたい。心や頭の柔らかいうちに そして 美しいうちに、と思っています


ごめんなさい、まだ続きます。