今日は長くなりそうなので、前置きなしに本題へ。ここ数日の投稿記事の続き、エキスパンダー挿入中やシリコン・インプラントによる乳房再建後の症状やトラブルについてです。では早速。
【④人工物の露出】
【2.放射線治療と人工物の挿入】
エキスパンダーの挿入やシリコン・インプラントでの再建は、
①一次再建の場合は全摘手術後の胸壁の放射線治療の可能性
②二次再建の場合は放射線治療歴
に影響を受ける。少し長くなるが、その理由から触れることにする。
A.放射線照射による皮膚ダメージ
先日、東京で「放射線治療が終了して1年半ほどが経った。やっと普通の皮膚っぽくなってきたよ」と同じ病院に同時期に入院した仲間の一人が言っていた(彼女は温存手術後の放射線治療)。放射線治療後の皮膚の状態は個人差が大きい。私の同じ病院の仲間の中だけでも、酷いやけどみたいになってしまった方から、一見では分からない方までいる。
個人差はあるものの癌細胞を焼き殺すために行う放射線治療。皮膚へのダメージはそれなりにある。このブログでよく登場させている下記ビデオ「アピタル乳がん夜間学校 第6回目-1時限目「 岩平 佳子 先生のお話」」の中で、岩平先生は放射線治療について次のように説明している。
放射線照射はやけど。下記のようなことが起こる。そして、放射線照射後の皮膚は元の状態に戻ることはない。
①皮脂腺 汗腺の破壊:皮膚から油分や汗が出なくなる。
②弾性繊維が変性:皮膚の弾力性が低下する。失われる。
③血行障害:血流が悪くなる。
なので、放射線治療後のエキスパンダーによる皮膚拡張やシリコン・インプラントでの乳房再建は、合併症のリスクが上がり難易度も上がる。放射線治療後にエキスパンダーを挿入し皮膚を伸ばす場合は、皮膚の状態に注意を払わないと皮膚が破れてしまう場合もあるようだ。
*下記ビデオの36分15秒あたりから被膜拘縮になりやすい要因の1つとして「放射線照射」に関する詳しい説明がある。それを観ると、放射線照射による皮膚ダメージ・再建への影響が分かる。このビデオは2011年9月のもの。放射線照射の説明に関しては3年間で変化はないと思うが、この3年強の年月で変わっている内容もあると思うので、そこに注意!
B.全摘後の胸壁への放射線治療
標準治療では 、全摘であっても、腋窩リンパ節に4個以上転移があった場合やシコリ(浸潤癌)が大きかった場合は放射線治療が推奨されている(日本乳癌学会HP内の「乳房切除術後の放射線療法は何のために行うのですか」を参照)。
で、ここでやっと冒頭で述べた本題。
C.放射線治療とエキスパンダーの挿入・シリコン・インプラントについて
①一次再建(乳がんの全摘手術と同時にエキスパンダーを挿入)の場合
エキスパンダーを挿入した状態での放射線照射に関する病院の方針による。欧米ではエキスパンダーを挿入した状態で放射線照射を行う病院が多いが、日本ではエキスパンダーを挿入した状態では放射線照射を行わない病院が多いと理解している。もちろん、日本でもエキスパンダーを挿入した状態で放射線照射を行っている病院はある。
それで、ここからは私の病院の場合の話し。
私の病院では「エキスパンダーを挿入した状態で抗がん剤治療は行うが、放射線治療は行わない」という方針がある(今も変わっていないと思う)。2年前の術前説明で乳腺外科主治医から、「エキスパンダーを挿入した状態で抗がん剤治療を行っても問題がないということが分かってきたが、放射線治療は合併症のリスクが上がるので....」といった説明を受けた記憶がある。私は、術前検査結果が非浸潤性乳管癌で、「胸壁への放射線治療の可能性はほぼゼロ」と主治医から説明されたこともあり、エキスパンダー挿入状態での放射線治療に関する説明は殆どなかったし、私もそれについて質問をしなかった。よってこれに関して詳しい説明を医師から直接聞いたことはない。
病院のこの方針に基づき、乳がん手術中に「全摘手術後に胸壁の放射線治療の可能性がある」と予想された場合は、エキスパンダーの挿入が中止になる。具体的な指針は「センチネルリンパ節生検で転移が2個以上あった場合はエキスパンダーの挿入は中止」だ(私も可能性は低いとしながらも、この方針について術前に説明を受けた)。
なぜ「センチネルリンパ節生検で転移が2個以上」なのか。乳がんの症例数が多い私の病院。統計的にセンチネルリンパ節生検で転移が2個以上あると、術後の病理結果で腋窩リンパ節への転移が4個以上となり、胸壁への放射線治療を行う可能性が高くなることが分かっているのだと推測している。とはいうものの、「センチネルリンパ節への転移が2個」という転移数そのものよりも、術後の胸壁への放射線治療の可能性を術中に推測し、エキスパンダー挿入に関する決断をしていると感じている。
でも術中の推測はあくまでも推測。「センチネルリンパ節への転移が2個だったからエキスパンダーの挿入が中止になってしまったが、術後の病理結果では腋窩リンパ節の転移数も2個のまま。胸壁への放射線治療の必要はなかった。あ~ぁ、エキスパンダーを挿入して欲しかったな.....」と嘆いていた人もいれば、「エキスパンダーを挿入したものの病理結果から胸壁への放射線治療をした方がいいとなってさ....。エキスパンダーの抜去やシリコン入れ替え後の放射線治療など、いろいろ考えなくてはならなくて.......はぁ~」と嘆いていた人もいるなど例外的?なことも実際に耳にした。
また、私の病院仲間には、術前検査でリンパ節への転移が判明し、腋窩リンパ節郭清が術前に確定していた方、術前抗がん剤を行った方がいるが、彼女らは乳腺科主治医から一次再建の選択肢は与えてもらっていなかった(追記:こういった場合でも、一次再建の選択肢がある方もいると思う)。
※参考:エキスパンダーを挿入した状態で抗がん剤治療をすると感染症のリスクが上がるので、センチネルリンパ節への転移が見つかったらエキスパンダーの挿入を中止する病院や医師もいると聞く。
②二次再建の場合
放射線治療歴の有無が影響する。放射線治療歴がある場合は、形成外科医が放射線治療後の皮膚の状態や残っている皮膚・皮下組織の厚さなどを総合的に勘案し、エキスパンダーやシリコンという人工物の挿入が可能か否かを判断すると理解している。私の病院では、放射線治療歴がある方は、皮膚移植を含めた自家組織再建の人が殆どだと思う。
つづく......
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【④人工物の露出】
【2.放射線治療と人工物の挿入】
エキスパンダーの挿入やシリコン・インプラントでの再建は、
①一次再建の場合は全摘手術後の胸壁の放射線治療の可能性
②二次再建の場合は放射線治療歴
に影響を受ける。少し長くなるが、その理由から触れることにする。
A.放射線照射による皮膚ダメージ
先日、東京で「放射線治療が終了して1年半ほどが経った。やっと普通の皮膚っぽくなってきたよ」と同じ病院に同時期に入院した仲間の一人が言っていた(彼女は温存手術後の放射線治療)。放射線治療後の皮膚の状態は個人差が大きい。私の同じ病院の仲間の中だけでも、酷いやけどみたいになってしまった方から、一見では分からない方までいる。
個人差はあるものの癌細胞を焼き殺すために行う放射線治療。皮膚へのダメージはそれなりにある。このブログでよく登場させている下記ビデオ「アピタル乳がん夜間学校 第6回目-1時限目「 岩平 佳子 先生のお話」」の中で、岩平先生は放射線治療について次のように説明している。
放射線照射はやけど。下記のようなことが起こる。そして、放射線照射後の皮膚は元の状態に戻ることはない。
①皮脂腺 汗腺の破壊:皮膚から油分や汗が出なくなる。
②弾性繊維が変性:皮膚の弾力性が低下する。失われる。
③血行障害:血流が悪くなる。
なので、放射線治療後のエキスパンダーによる皮膚拡張やシリコン・インプラントでの乳房再建は、合併症のリスクが上がり難易度も上がる。放射線治療後にエキスパンダーを挿入し皮膚を伸ばす場合は、皮膚の状態に注意を払わないと皮膚が破れてしまう場合もあるようだ。
*下記ビデオの36分15秒あたりから被膜拘縮になりやすい要因の1つとして「放射線照射」に関する詳しい説明がある。それを観ると、放射線照射による皮膚ダメージ・再建への影響が分かる。このビデオは2011年9月のもの。放射線照射の説明に関しては3年間で変化はないと思うが、この3年強の年月で変わっている内容もあると思うので、そこに注意!
B.全摘後の胸壁への放射線治療
標準治療では 、全摘であっても、腋窩リンパ節に4個以上転移があった場合やシコリ(浸潤癌)が大きかった場合は放射線治療が推奨されている(日本乳癌学会HP内の「乳房切除術後の放射線療法は何のために行うのですか」を参照)。
で、ここでやっと冒頭で述べた本題。
C.放射線治療とエキスパンダーの挿入・シリコン・インプラントについて
①一次再建(乳がんの全摘手術と同時にエキスパンダーを挿入)の場合
エキスパンダーを挿入した状態での放射線照射に関する病院の方針による。欧米ではエキスパンダーを挿入した状態で放射線照射を行う病院が多いが、日本ではエキスパンダーを挿入した状態では放射線照射を行わない病院が多いと理解している。もちろん、日本でもエキスパンダーを挿入した状態で放射線照射を行っている病院はある。
それで、ここからは私の病院の場合の話し。
私の病院では「エキスパンダーを挿入した状態で抗がん剤治療は行うが、放射線治療は行わない」という方針がある(今も変わっていないと思う)。2年前の術前説明で乳腺外科主治医から、「エキスパンダーを挿入した状態で抗がん剤治療を行っても問題がないということが分かってきたが、放射線治療は合併症のリスクが上がるので....」といった説明を受けた記憶がある。私は、術前検査結果が非浸潤性乳管癌で、「胸壁への放射線治療の可能性はほぼゼロ」と主治医から説明されたこともあり、エキスパンダー挿入状態での放射線治療に関する説明は殆どなかったし、私もそれについて質問をしなかった。よってこれに関して詳しい説明を医師から直接聞いたことはない。
病院のこの方針に基づき、乳がん手術中に「全摘手術後に胸壁の放射線治療の可能性がある」と予想された場合は、エキスパンダーの挿入が中止になる。具体的な指針は「センチネルリンパ節生検で転移が2個以上あった場合はエキスパンダーの挿入は中止」だ(私も可能性は低いとしながらも、この方針について術前に説明を受けた)。
なぜ「センチネルリンパ節生検で転移が2個以上」なのか。乳がんの症例数が多い私の病院。統計的にセンチネルリンパ節生検で転移が2個以上あると、術後の病理結果で腋窩リンパ節への転移が4個以上となり、胸壁への放射線治療を行う可能性が高くなることが分かっているのだと推測している。とはいうものの、「センチネルリンパ節への転移が2個」という転移数そのものよりも、術後の胸壁への放射線治療の可能性を術中に推測し、エキスパンダー挿入に関する決断をしていると感じている。
でも術中の推測はあくまでも推測。「センチネルリンパ節への転移が2個だったからエキスパンダーの挿入が中止になってしまったが、術後の病理結果では腋窩リンパ節の転移数も2個のまま。胸壁への放射線治療の必要はなかった。あ~ぁ、エキスパンダーを挿入して欲しかったな.....」と嘆いていた人もいれば、「エキスパンダーを挿入したものの病理結果から胸壁への放射線治療をした方がいいとなってさ....。エキスパンダーの抜去やシリコン入れ替え後の放射線治療など、いろいろ考えなくてはならなくて.......はぁ~」と嘆いていた人もいるなど例外的?なことも実際に耳にした。
また、私の病院仲間には、術前検査でリンパ節への転移が判明し、腋窩リンパ節郭清が術前に確定していた方、術前抗がん剤を行った方がいるが、彼女らは乳腺科主治医から一次再建の選択肢は与えてもらっていなかった(追記:こういった場合でも、一次再建の選択肢がある方もいると思う)。
※参考:エキスパンダーを挿入した状態で抗がん剤治療をすると感染症のリスクが上がるので、センチネルリンパ節への転移が見つかったらエキスパンダーの挿入を中止する病院や医師もいると聞く。
②二次再建の場合
放射線治療歴の有無が影響する。放射線治療歴がある場合は、形成外科医が放射線治療後の皮膚の状態や残っている皮膚・皮下組織の厚さなどを総合的に勘案し、エキスパンダーやシリコンという人工物の挿入が可能か否かを判断すると理解している。私の病院では、放射線治療歴がある方は、皮膚移植を含めた自家組織再建の人が殆どだと思う。
つづく......
「また長い記事だね。でもOKよ!」
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