先日、大阪の天満天神繁昌亭に行ってきました。参議院選挙中、全国で最もにぎわっていた天満橋筋商店街に、もう一度行ってみたいと思っていました。

 

繁昌亭で行われている寄席も覗いてきました。正直言って、その質の高さに驚きました。東京の新宿末廣亭や浅草演芸場には時々行きますので、寄席の雰囲気には親しんでいるつもりだったのですが、繁昌亭の寄席は雰囲気が大きく違いました。

 

まずはその盛況ぶり。平日の昼間でもいっぱいになるようです。会場内は飲食禁止。持ち込んだ大阪名物たこ焼きをロビーで食べるはめになってしまいましたが、なるほど会場内は和やかながらも熱気にあふれていて、ものを食べる雰囲気ではありません。当然のように寄席の最中の出入りは禁止。ちなみに、東京の寄席は大阪と比べると、まったりしています。平日は客がまばらな日も多く、会場の中でいなり寿司なども置いていて飲食は自由。噺家の目の前を客が平気で出入りすることもあります。私は、東京の寄席の「ゆるい」感じも嫌いではありませんが、繁昌亭の寄席の熱気には大いに感銘を受けました。関西育ちながら、笑いを大切にする大阪の文化を侮っていました。大阪は、東京に比べると「ええ加減」であるという印象すら覆りました。

 

寄席の熱気は、2億円以上の寄付を集めてつくられた繁昌亭の設立経緯とも関わりがあるような気がします(開業は2006年。経緯は平田オリザさんが書かれた「新しい広場をつくる」に詳しく書かれています)。天井を見ると、スポンサーである天神橋筋商店街のお店や個人の名が書かれたおびただしい数の提灯が下がっています。大阪商人の心意気の表れと言えるでしょう。繁昌亭の近くには、食い倒れの街らしいふらっと立ち寄りたくなる飲食店がたくさんあります。寄席のお客さんや噺家が商店街に流れ、地域での交流も広がっているようです。

 

文化振興と言うと固いイメージを持っている人がいますが、文化は街づくりや地域社会と密接につながっています。むしろ、文化が介在しない経済だけのつながりは「金の切れ目が縁の切れ目」になりかねません。天神橋筋商店街の姿は、地域社会を考える上で大きなヒントとなりました。

 

中曽根康弘元総理は、「政治は文化に奉仕するもの」と発言されています。心したいと思います。