2017年3月16日 憲法審査会 自由討議
テーマ:日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件、特に参政権の保障をめぐる諸問題(「一票の格差、投票率の低下その他選挙制度の在り方」及び「緊急事態における国会議員の任期の特例、解散権の在り方等」)について調査  

 

 

○細野委員

 私からも、緊急事態における国政選挙の延長について発言をさせていただきます。


 私は、あの東日本大震災のときに総理の補佐官をやっておりましたので、あの緊急事態においてどのようなことが起こったのかということについて相当知り得る立場にあります。その立場で申し上げるならば、そのときに仮に国政選挙ということがあったならば、それは繰り延べ投票という形ではとても対応し切れなかったであろうし、また、緊急集会のみで対応するということも非現実的であったであろうというふうに思います。


 したがって、何名かの方から問題提起がありましたけれども、いかなる事態においても民主的な政治制度を維持していくという意味では、国政選挙の延長についてはしっかりと議論をした上で結論を出すべきであるというのが私の意見であります。


 そういう経験もありますので、やや踏み込んで、具体的に少し提案をさせていただきたいというふうに思います。


 まず、どのような事態に選挙について延長を可能にするのかということでありますが、これは私見でありますけれども、私は、それを緊急事態条項という特定の名称にして絞り込む必要は必ずしもないのではないかというふうに思います。緊急事態条項というふうに定義をした場合には、恐らくの場合、それを定義するのは政府ということになろうかと思います。また同時に、恐らく、私権制限や政府の権限拡大についての議論とも結びつくというふうにも思われます。


 きょうは、ここは本題ではありませんので長くは述べませんけれども、例えば憲法二十二条、これは職業選択の自由について書いた条文でありますが、ここには明確に、公共の福祉による制約というのを明記しております。したがって、例えば医療関係者や自衛隊関係者に対して、ここで、緊急事態において対応せよという業務命令は現行憲法下の法律で出すことができます。同時に、憲法二十九条、財産権についても、二十九条の中に公共の福祉についての記述がございます。したがって、緊急時におけるさまざまな土地の収用などの手続は現行憲法上許されておりまして、法律により対応可能であります。


 したがって、あえて緊急事態条項というのを新たに設けて政府に巨大な権限を付与する必要性は、少なくとも私の経験上ありません。仮にそういったことがあるのであれば、具体的に提示をしていただいて、どういった支障があるのかということについて説明をする責任は、提案をされる側にあるだろうというふうに思います。


 したがって、私が提案をしたいと思いますのは、選挙の延長についてはもう少し緩やかに書くのはいかがか。例えば、自然災害の発生その他の事情により選挙を適正に行うことが著しく困難である、こういう規定にしておいた上で、その判断を立法権そのものが判断をし、例えば百八十日を上限に選挙を延長できるというような形にしておけば、いかなる事態においても立法機関が機能し、必要な政策を決定することができる。さらには、政府がそれこそ国民が望まないことをやる場合については、議会がそれにしっかりとストップをかけるということも可能になるのではないかというふうに思います。


 二点目に申し上げたいことは、今の関連にもございますが、やはりこの選挙の延長は立法権自身が、立法機関そのものが決めるという原則は、これは守るべきだというふうに思います。


 といいますのは、仮にこれが政府による決定ということになりますと、逆に、例えば武力攻撃事態、いわゆる戦争ですね、そういったことがあった場合に、国民は判断をする権利があるわけですから、その権利を政府が奪うことにもなりかねませんので、その意味では、政府がそれを決めるということについて、明確にしておくべきだろうというふうに思います。
 したがって、その観点からするならば、枝野委員の方からも発言がありましたけれども、仮に選挙の延長を決めた場合に、そのときに政府が解散をするということになると、この考え方に根本的に矛盾しますので、解散権の制約についても必然的に議論をしていかなければならないということをぜひ皆さんに御理解いただきたいと思います。
 最後に、定足数について申し上げます。


 さまざまな緊急事態、例えば首都直下地震、もしくは、私が個人的に懸念をしておりますのは、我々が生活している宿舎が大規模なテロに遭って大量に議員が死ぬ場合、そういったケースにおいて、例えば緊急事態で選挙の先延ばしが必要であるというようなことも考えられます。ただ、その場合に、仮に定足数の三分の一を満たさなかった場合、選挙の延長すら決められない、国会が一切の議決ができないということになる可能性があります。もちろん、極めてレアなケースでありますけれども、具体的に考えると、そのケースというのは全く考えられないわけではありません。


 そこで、定足数についても、議員の数が極めて限られていますので、どうやって決めるのかが非常に難しいんですが、しっかりと法律において法手続を定めた上で、議長もしくは議長にかわる人間が、集まれる人間は全員集めることが大前提ではありますけれども、定足数についても極めて例外的に緩和をして、常に議会が動いておく状況にしておくことも重要であるということを最後に指摘したいというふうに思います。


 もう一度私の思いを最後に申し上げて終わりたいと思うんですが、国会というのは国権の最高機関です。いかなる事態においても機能させることは極めて重要です。それをしっかりと議論して結論を出すのは私は国会の役割だというふうに思いますので、各党各会派でしっかり議論した上で、この憲法審査会での議論が進み、結論を得ることを心より私は望んでいるということを最後に申し上げて、発言を終わりたいと思います。


 ありがとうございました。