朝井リョウ『どうしても生きてる』読了。



朝井リョウ、いろいろ名著があるのに読んでいなくて、初めて読んだのはエッセイだった。

それが超絶おもしろくて、笑えて、朝井リョウがどんな人なのか伝えてくれるもので。
そんな著者の小説を初めて読んだ。
6編の短編から成る本書、『どうしても生きてる』というタイトルの作品はない。
だが、6編とも、目の前の現実にどうにかなってしまいそうでも死んでしまいたいと思うようなときでも、それでもなんとか『どうしても生きてる』人々を描いている。
それは、自分のことかもしれないし、隣にいる人のことかもしれない、作り物の世界ではない身近な現実にもがいている人々の姿を活写していて、筆致は若いというか多分朝井リョウらしさが溢れているのだが、観察眼、描写力は素晴らしく、小説という虚構でありながら実のこととして胸を抉るものがある。
生きていると、誰しも、人生そのものや人間関係や何かしらに大なり小なりの鬱屈を抱えているのではないだろうか。
不満や怒りや悲しみや嫉妬、いろんな感情を全部さらけ出せる場面や相手なんて、そうはないと思う。
吐き出してしまう一歩手前でぐっと堪えて生きている人、多いはず。
私の職場の五歳年上の先輩は不満や怒りを口に出す、彼女をみんなは「強い」と言う。
でも、言ったらスッキリしてわだかまりがないというものでもないだろう。
彼女は実は人一倍細かく気配りができる。
「優しい」けどオバチャンだから「強い」のかもしれない。
上辺は優しくて腹の中がわからない人のほうがよっぽど「こわい」。
私はぐっと堪える質だけど、こういう場に思っていることを書いたり書かなかったり、、、。
ハッピーエンドの虚構ではなくて、私たちの目の前の現実は生きている限りエンドレスに心を苛む。
そういう小説。
私だって、死んでしまったら楽だと思うこともしばしばだけど『どうしても生きてる』。
生きていれば、いいこともあるしね👌