トーベ・ヤンソン『ムーミン谷の仲間たち』読了。(山室静訳)



9つの短編集。
私がいちばん好きだったのは『目に見えない子』。
表紙の絵にもなっている。
嫌味なおばさんに育てられて、ひどいことばかり言われてきたニンニは、ついに姿が見えなくなってしまう。
辛辣なことを言われて消えたくなってしまうっていう経験あるよね、それ。
おばさんが育児放棄してトゥーティッキのところに連れてくる。
トゥーティッキは、この子はムーミン屋敷で暮らすのがいいと判断して預ける。
今までも書いてきたけど、ムーミン一家はあたたかくて自由で、本当に素晴らしいからね。
みんな、ニンニを無理に見えるようにしようとかはしないんだ。
ママが特に秀逸でね、服とリボンを作ってあげて存在はわかるようにするんだけど、急かしたり、諭したりとか、一切しないの。待つの。
みんなのあたたかさと自由さに触れて、ニンニは爪先からだんだん見えるようになっていく。
顔が最後。
萎縮してしまっているニンニに、いつも人に意地悪もいっぱい言うけど真理もついていたりするちびのミイが言う。
「あのさ、たたかうってことをおぼえないかぎり、あんたは自分の顔を持てるわけないわ。」
みんなの優しさと自分の強さ、
顔が見えるようになった頃にはニンニはミイより悪い子なくらいの、元気な女の子になった。
やっぱりムーミン一家は最高だね。