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3時間もの間、止まなかったベッドの軋む音が止まった。部屋の中には静寂さだけが漂っている。長いセックスで疲れた二人は少しの間、眠っていたらしい。

僕は目が覚める。ここはどこ?
夢から覚めたように本当に一瞬、そう思った。

「・・・・過去は忘れていくわ」

その夢心地の中で、美香のその言葉だけが頭の中で何度もリピートし始める。

「・・・・・俺は酔ってるのか?」

一度は麻痺していた肌の感覚が次第に目を覚ます。しわくちゃの濡れたベッドシーツの感触が僕を夢から覚めさせ、現実へと引き戻す。横には女が眠っている。白い背中が上下に揺れている。

女はうつぶせになり、静かに寝息をたてている。うなじからお尻、そして足の先まで山なりの曲線で描かれ、薄明かりの中で艶やかに存在する裸体が、見ている僕の心をまたもやゾクリとさせる。

このまま女を眠らせてあげたかった。というよりも、この女の静かに動かない姿をあえて見ていたいと思った。普段、見れない眠った顔を見つめる。夢でも見ているのだろうか・・閉じられた瞼はピクピクと微かに痙攣している。

僕は女のうなじ、背中、そしてお尻へと舌先を這わせていった。お尻の割れ目を開き、その中にある黒い影に舌先を這わせる。開くとピンク色の肉が見える。鼻を近づけると、そこはうなじから嗅いだ匂いをより濃くしたような匂いが漂っている。性交の後だけに、何種類もの匂いが混じりあい、鼻先をワレメに突っ込むと鼻腔に酸味の匂いが満ちた。

女は目を覚まさない。指先を割れ目に這わせると、そこは以外にもたっぷりの潤いと温もりを湛えている。女を横向きにさせる。もうすでに女は起きて寝た振りをしているのかもしれない。女の腰を引き寄せて、薄い陰毛に彩られた2つの恥丘の間に鼻を埋める。生ぬるく蒸れた匂い。匂いを楽しみ、下を割れ目へと差し入れる。膣口の脹らみがレモンの先のようにみえ、その周りにビラビラとした赤いヒダが見える。淡い酸味臭のヌメリを吸い上げながら、ブドウ粒まで舐めあげていく。

「あっ、あああ、あん、いいわ。」

女は目を覚まし、顔を上げる。半開きの目で僕を見ながら、またもや僕の頭を撫でる。可愛いと思い、彼女にキスをした。唇は水気をたたえ、プックリと柔らかかった。女は立ち上がり、テーブルの上のクリームを取ると、指先にたっぷりとクリームを取り、全身に塗り始めた。漂うクリームの芳香が鼻腔に心地よい。女の肌に広がるクリームがきれいに光って見える。

女は床に落ちた紫のブラジャーとパンティを見下ろす。そして、それらを手に取ると、ベッドサイドに座りながら履いていく。ルームガウンを羽織ると、ベッドから立ち上がり、冷蔵庫からシャンパンを取り出す。女が投げたせいだろう…遠くに転がっている片方のハイヒールを拾い上げる。

「もう、こんな時間なのね」と美香はぽつりと呟く。

「ねえ、あなたは私の何を知っているの?」

僕には答えがすぐに出てこなかった。

「私の好きなところを10個答えられる?」、って会話はよくある。適当に5個ぐらい答えて、「もう分からない」といって誤魔化すのが常だったが、この単刀直入な質問の答えに僕は困惑した。

「正直、よく分からないな。」

「そうよ。それが正解。正直に言ってくれてありがとう。」

「ドライブしながら喋ったり、枕元で言葉を紡いだり、セックスしたりしても、それだけでは相手のことは分からないのよ。あなたも本音を隠している。私も本音を隠している。心の根っこが繋がらない限り、お互い、絶対にわかり会えないの・・・独り言だと思って。じゃあ、またね。」

余韻を含む言葉を残して、美香は僕の腕をすり抜けるように去っていった。もう既に美香は家族の待つ自宅で普通の主婦に戻っているはずだろう。

(終)