何も……書けねぇ……。

ってな訳で僕が主催してるぼっち稽古会ってのやつの第1回で使ったテキスト5本のうち主に使った2本を皆様にお届けします。急ぎで書いたので荒いです。良かったら読んでね。そして良かったらぼっち稽古会に来てね。


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「告白」

        男        ただの男。

        女        女。それなりに美人。

     

道ばた、男が女に土下座をしている


男 お願いします!そこをなんとか!

女   いやほんと困ります

男   お願いします

女   マジでやめてください

男   お願いします!

女   なんか、もう、誰かに見られたらどうすればいいんですか

男   そんなのどうでもいいんですよ。 ほんとお願いします!

女   ほんと困るんで、ってか困ってるんで今現に、ほんとにやめてください

男   困らせるつもりはないんです

女   そう言われても困るんです、困ってるんですよ

男   困られてもこっちが困るんですけど

女   いや困る困らないの問題じゃなくて、あー、なんだ? 困るって何だ?

男   コマコマ言ってるから

女   誰のせいだよ。 お願いですから頭上げてください

男   頭上げていいんですか?

女   頭上げてくださいよ

男   それは、僕の願いが受理されたうえで頭を上げていいということですか?

女   受理? いやいやいやいやそれはない 

男   じゃあ上げれません

女   いや上げてください頼みますから

男   出来ません。 僕と付き合ってくれるまで、頭は上げません!

女   新手の脅迫かよ

男   とんでもない。 懇願です

女   いやもー、なんなんだよもー…… 

男   お願いします、付き合って下さい 

女   はぁ


        女、立ち去ろうとする


男   どこに行くんですか

女   ……

男   いいんですか? あなたが付き合ってくれない限り僕はこのままなんですよ!?

女   ……

男   ちょっとー? 僕が惚れた女性はそんな気量の小さい女性だったんですか!?ほんとに、ほんとに僕をこのままにして逃げちゃうんですか?人でなしなんですか?

女   すごい良心の呵責に訴えてくるよこいつ

男   あ、そこにいらっしゃったんですね

女   いるよ一応

男   良かった、誰もいない所に叫んでるってかなり不審者ですよね

女   今のままでも十分不審者だよ

男   見る人によるでしょ

女   よらないよ。 誰が見てももれなく不審者ですよ

男   ええっ!? ほんとですか?

女   なんでこんな驚いてるんだよこいつ

男   じゃあ不審者と一緒にいるあなたも不審者ですね?

女   だから一緒にされるのが嫌だから頭上げてくれって言ってるんでしょうが

男   それは僕の願いが受理された上で?

女   受理はしない。 なんでそこだけ難しい言葉使うんだよ

男   ちょっと考えてみてくださいよ?

女   はい?

男   ウィンウィンじゃないですか

女   ウィンウィン?

男   あなたは、僕に顔を上げさせることで不審者にならずにすむし、僕はあなたと付き合うことが出来る。 ウィンウィンでしょ?

女   そんな自分本位なウィンウィンがあるか

男   え?

女   え?ってなんだよ。 え、どこが? どこがウィンウィンだと思ったの?本気で思ってんの?

男   え?

女   え?じゃねーよ

男   すいません割とテンパってるんで考えたことそのまま喋ってます

女   それでも、あ、普段はまともな人なんだなってならないけど

男   いや、いやいやいや普段はまともですよ 女   はぁ

男   ほんとにまともすぎて退屈なぐらいですよ

女   あ、じゃあ無理です、私退屈な人とは付き合えないんで

男   あー、いや超エキセントリックすよ僕。 あの、よくサバイバルナイフ持って深夜の街徘徊してますから

女   こえぇよ

男   退屈じゃないでしょ

女   あんたの退屈じゃないって度合いがもうわかんねーよ

男   えーもうなんなんですか

女   何が

男   大の男がここまでしてるんですよ?

女   だから知らないって

男   俺顔上げちゃいますよ?

女   どうぞ

男   いいんですか上げちゃって

女   さっきから上げてくれって言ってるじゃないですか

男   でも俺の願いは受理されないんでしょ?

女   受理しません。 だからなんでそこだけ受理なんだよ。 叶えるとかあるだろ


        男、顔を上げようとするが、上げられない


男   うぅー

女   どしたの

男   上げられない

女   はぁ?

男   いやね、顔を上げた時のこと考えたんですよ、俺結構そういう先が読めるタイプなんで、次のこと考えるんすよ

女   じゃああんた先のこと考えて土下座してるのか

男   でね、顔を上げるじゃないですか

女   あ、無視だ

男   そしたらあなたの顔が目に入るわけでしょ?

女   そうだね

男   無理だよ話せないよ。 大好きな人にね? ここまで醜態晒してね? どうやって目を合わせて喋ればいいんだよ

女   そういう羞恥心はあるのね

男   無理だよ、ただでさえ目を合わせて喋れるか分からないのに

女   だから土下座なのか

男   まぁ半分半分ぐらいで

女   そうか


        男の土下座はまだまだ続く。おしまい


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「罪を憎んで人を憎まず」

        太腿筋激固   ふともものすじ げきかた 、と読むらしい

        肘上筋肉麻呂  ひじのうえの きんにくまろ 、と読むらしい


太腿  この世に伝わる伝説の刀、『筋・上腕二頭』を探し古今東西東奔西走、全国津々浦々を回り、あたりの人に聞き込み聞き込みはや5年、やっとの思いで掴んだ噂、わらにもすがる思いで、備前にやって来たこの私は太腿筋激固。由緒正しき太腿筋家の二男坊、長男バリ固の命で『筋・上腕二頭』をさがしている。我はどうしてもその刀を手に入れなければならない。太腿筋家に伝わる伝説で、井戸の水が干上がる時、西方から敵がやってくる。この世に伝わる伝説の刀をもってそれを撃退せよ、尚それは井戸の水が干上がってから5年後とする。というものがある。相手は分かっている、5里ほど離れた西方、これまた我が家と同じ程の伝統もつ、肘上家だ。肘上家には腕の立つ兄弟がいる。長男、肘上筋肉麻呂、二男、肘上背筋麻呂。この二人に対抗するために、どうしても伝説の刀が必要なのだ!! ん、誰かいるぞ? 様子を見よう


肘上  これが、この輝きが伝説の刀、『筋・上腕二頭』!! 美しい、この美しさ、あの切れ味、まさしく伝説の刀という訳だ。 いやはや、興奮して刀屋の店主を切り殺してしまったが、フフ、この肘の上の筋肉が疼いてしまったものだ、仕方ない。さて、弟にもいい報告ができる。さっそく故郷へ帰るとしよう。


太腿  待てい、お主が持つその刀、血に濡れているが実に美しい輝き、さぞ名のある刀とみた、どうして血に濡れているのか気になるところではあるが野暮なことは聞かん、その刀を譲ってくれはしないだろうか


肘上  おうこれはお目が高い、それにこの血を見逃すという広い心、名のある家の出だと推察するにあまりある。 しかしそんな身分のお主にもこの刀を渡すわけにはいかない。何せこの刀はこの世に2本とない伝説の刀、『筋・上腕二頭』! 持つ者の上腕二頭筋を極限まで発達させその腕から放たれる一太刀は海をも割ると言われる名刀、申し訳ない旅の人、いくらお主の頼みといえど、これを渡す訳にはいかないのだ


太腿  なに!『筋・上腕二頭』! 『筋・上腕二頭』と言ったか! それは我が探し求め探し求め5年、ようやく風の噂を便りにここまでこぎつけ喉から手が出るほど欲した伝説の刀! どうやら少しばかり来るのが遅かったようだ、お主、それをどこで?

肘上  そこの角の刀屋で手に入れた

太腿  そこの角だと

肘上  そうだ

太腿  なんという不幸、この男よりすこしここにたどり着くのが早ければ、あの刀を手にしていたのは我だったというわけか。 して、何故に刀は血ぬれなのだ


肘上  それは見逃すと言っていたのでは? まぁ良い話そう。 半時ほど前ここにたどり着いた拙者はそこの刀屋を見つけた。正直何も期待せずに店に入ったがすぐにこの刀の輝きが目に入った。 店主の親父はそれは呪いの刀だとかあれこれいって買わせまいとしたが、そもそも拙者には持ち合わせが無かった。 つまり買うつもりはなかった。勢いに任せこの刀を鞘から引き抜き手にもった瞬間なんともいえぬ上腕二頭筋の高まり、気がついた時には店主は物言わぬ屍になっていた。 と、こういうことだ

太腿  強盗ではないか

肘上  強盗ではない。 成り行きだ

太腿  しかしまて、その筋肉、どこかで見覚えがあるのは気のせいだろうか、いや、以前見た時はここまで立派な筋肉ではなかったが

肘上  そう言われればお主、まさにはちきれんばかりの太腿、着物の上からでもわかるその太腿、いや、拙者が知っているやつはまだもう少し貧相だったはずだ、しかし

太腿  我は太腿筋家が次男坊、太腿筋激固


肘上  なんと、やはりお主、ええい、名乗られたからには名乗らねばならぬ、拙者は肘上家が長男、肘上筋肉麻呂、まさかこんな所で仇敵に相対するとは、しかし間が悪かったな太腿の。 今拙者の手にはこの刀、『筋・上腕二頭』がある。一振りで海を割るこの業物に、お主の腰のちんけな刀はどれほどもつかな?


太腿  やってみなければわからん。 正直勝てる気はせんが、やるしかない

肘上  いざ! ……ん?

太腿  どうした肘上の。 その刀を持っているとはいえ流石に構えてもおらんやつには切りかかれん

肘上  腕が、上がらんのだ

太腿  どういうことだ

肘上  ああ、そういえば店主が死に際言っていた気がする。 この刀、一度でも降れば上腕二頭筋に多大なる呪いを残し、もう二度と刀を振るために腕が上がらなくなると

太腿  なんだと


肘上  拙者は店主を切り殺した時にそのひと振りを使ってしまったのだ。ああ何と情けない。これではこの鍛え上げた筋肉はこれからどのように使えばいいのだ。 ああ太腿の、俺を切るがいい、そしてこの刀を一振りし肘上家を滅ぼすがいい。 拙者は情けない男。 もう家に顔向けは出来ぬ


太腿  心中お察しする肘上の。 しかしそれは出来ぬ。 まさしくそれは妖刀。 悪いのはお主ではなくその刀だ。 それを使ってしまっただけのお主に罪はない。 それよりもお主は我を名のある家の出だと太腿筋家褒めてくれた。 肘上家の者はそのような精神を持っていないものだと思い込んでいたのだ。 やあ、肩を貸そう、一緒に故郷に戻り話し合い、共存の道を探るのだ強き人よ


肘上  ああなんと立派な男。 ありがとう、ありがとう

太腿  泣くな。 あと刀は使えなくても槍は使えるのではないか?

肘上  おお! その手があったか! なんと聡明な男だ!


        太腿家と肘上家は、以後手を取り合って仲良く暮らしましたとさ。おしまい。