「カロスがそうしたいならそれでかまわない。だがな、これだけは守ってもらう。
ルナに解放の言葉だけは伝えるな」
「ありがとうございます、ボス。あの言葉を伝えないのはあいつのためでもあります。
絶対に教えたりしません」
それから2人は朗らかに何でもない話をしてカロスは書斎を出た。
パタン。静かに扉を閉めた。
「よしっ、行くか」
「ルナーいるか?入るぞー」
そう言いながらドアノブを回す。鍵がかかっていなくて簡単に回るドアノブ。
(鍵かかってねぇじゃん)
「居るなら返事しろよ」
苦笑を浮かべながらルナに近づき、同じテーブルの椅子に座った。
「あーごめん、ごめん。本に集中してて気づかなかったよ」
「てめぇっ!棒読みじゃねぇか!本当は気づいてたんだろ?」
「だってカロスがくるとうるさいから。五月の蝿だから、うん。」
少し顔を上げてそう言ってまた本に目を落とす。
「何がうるさいだ!こっちは話があるんだから来てんだろ?一回本置けって、」
そう言ってデコピンするカロスをメガネの奥から睨む。
「睨んだって無駄だからな」
カロスがまっすぐと見返すとルナはワザとらしく「はぁ~」と
ため息をついて、なんだかんだで本を置いた。
「で、話ってなに?」
「目つぶれ」
「ふざけてんならでてってよ」
「そんな冷たいこと言うなって!
せっかくルナが前から欲しがってたもんもってきてやったのによ~」
その言葉に開きかけた本を閉じる。
その眼を見ればおやつを待つ子供のようにきらきらしていた。
「そうならそうと早く言ってよね!」
「目つぶったらだしてやるよ」
いたずらっぽく笑うカロスにぶつくさ文句をいいながらも素直に目を閉じたルナを見て
コイツもかわいいところあるじゃないかと思いながら
ルナが本を読んでいる間にこっそりテーブルの下で隠した"贈り物"をゴソゴソいじる。
コツンとガラスのテーブルと何かが当たる音がした。
「もう開いてもいいぞ」
目を開いて"贈り物"を見てこれを本当にもらってしまっていいのか
これはカロスの大切なものじゃないのか、大切なパートナーじゃないのか…。
自分でも気づかないウチになんとも言えない顔をしていたのだろう。
「そんな顔するなよ、おさがりじゃ嫌か?」ちゃかすように言ってカロスに頭をポンポンとされてしまった。
「だって、これ、…」
「あぁ、俺の星月花だ。これをお前にもっていてもらいたいんだ。訳あって俺が持ってるわけにはいかなくなったんだ。
ボスの許可がおりたら俺がまた世話になるが、」
いつになく真剣に話すカロス。話の途中で言葉をきり、悲しそうで苦しそうで、
困ったように眉が下がった表情で続けた。
「その時が半永久的に来ないかもしれねぇ…。それまでお前に預かっててほしいんだよ、ルナ」
「わたしなんかで本当にいいの?他に強い人はたくさんいるし、きっと星月花だってそういう人に使ってもらえた方が嬉しい」
「そうでしょ?」そういうルナの手をカロスが握ってきた。手を引っ込めようとしたのに
カロスの大きな手がそれをさせない。
「俺だって他のやつのことも考えたさ。けどよ、やっぱりルナ以外に"相棒"を持ってるの想像してもしっくりこないんだ」
ルナの手をすっぽり包む手からも「"相棒"を頼む」と言わんばかりにカロスの熱が伝わってくる。
直接伝わってくる熱もカロスの目に宿る熱もこの話がなんの偽りもないことを
言葉よりも確かに伝えてくれる
「後で後悔したって知らないからね」
「お前ならそんなことさせないだろ?」