Reformsfor a Stronger Japan

外務省訳:強い日本へ、改革あるのみ
 
普通の訳だと、「より強い日本への改革」となるはずだが。
 

As a matter of fact, I have somethingI can tell you now.

It was about 20 years ago. The GATTnegotiations for agriculture were going on.

I was much younger, and like a ballof fire, and opposed to opening Japan's agricultural market. I even joinedfarmers' representatives in a rally in front of the Parliament.

外務省訳:実は、いまだから言えることがあります。
 20年以上前、GATT農業分野交渉の頃です。血気盛んな若手議員だった私は、農業の開放に反対の立場をとり、農家の代表と一緒に、国会前で抗議活動をしました。

「実は」にある「」は無用だろう。
20年以上前」とあるが、原文では「およそ20年前」といっている。
 

However, Japan’s agriculture has goneinto decline over these last 20 years. The average age of our farmers has goneup by 10 years and is now more than 66 years old.

Japan's agriculture is at acrossroads. In order for it to survive, it has to change now.

We are bringing great reforms towardthe agriculture policy that's been in place for decades. We are also bringingsweeping reforms to our agricultural cooperatives that have not changed in 60long years.

外務省訳: ところがこの20年、日本の農業は衰えました。農民の平均年齢は10歳上がり、いまや66歳を超えました。 

日本の農業は、岐路にある。生き残るには、いま、変わらなければなりません。
 私たちは、長年続いた農業政策の大改革に立ち向かっています。60年も変わらずにきた農業協同組合の仕組みを、抜本的に改めます。

 
for decades を「長年」と訳しているが。「数十年」が適切。
「農業協同組合の仕組みを、抜本的に改めます」とあるが、「農業協同組合に対し抜本的な改革を行うことになっています」となっている。
 

Corporate governance in Japan is nowfully in line with global standards, because we made it stronger.

Rock-solid regulations are beingbroken in such sectors as medicine and energy. And I am the spearhead.

To turn around our depopulation, I amdetermined to do whatever it takes. We are changing some of our old habits toempower women so they can get more actively engaged in all walks of life.

外務省訳:世界標準に則って、コーポレート・ガバナンスを強めました。医療・エネルギーなどの分野で、岩盤のように固い規制を、私自身が槍の穂先となりこじあけてきました。
 人口減少を反転させるには、何でもやるつもりです。女性に力をつけ、もっと活躍してもらうため、古くからの慣習を改めようとしています。

 
世界標準に則って、コーポレート・ガバナンスを強めました。」とあるが、原文では、「日本のコーポレート・ガバナンスは世界標準と軌を一にしております。我が国がそれを強化したためです。」とある。
 
rock-solid を「岩盤のように固い」と訳しているが、原文では「石のように固い」といっている。「岩盤」は bedrock という。
 
spearheadは「槍の穂先」が直接的な意味だが、ここでは「先陣」や「先鋒」という意味。「先頭になって戦っている」という意味だろう。
 
turn around を「反転させる」と訳しているが、ここは「立て直す」くらいの意味か。
 
「女性に力をつけ、もっと活躍してもらうため、古くからの慣習を改めようとしています。」と訳されているが、丁寧に訳せば、「女性に力をあたえて、女性があらゆる職種でもっと積極的に活躍してもらえるように古くからの慣習を改めているところです」となる。
 

In short, Japan is right in themiddle of a quantum leap.

My dear members of the Congress,please do come and see the new Japan, where we have regained our spirit ofreform and our sense of speed.

Japan will not run away from anyreforms. We keep our eyes only on the road ahead and push forward withstructural reforms.

That's TINA: There Is No Alternative.And there is no doubt about it whatsoever.

外務省訳: 日本はいま、「クォンタム・リープ(量子的飛躍)」のさなかにあります。
 親愛なる、上院、下院議員の皆様、どうぞ、日本へ来て、改革の精神と速度を取り戻した新しい日本を見てください。
 日本は、どんな改革からも逃げません。ただ前だけを見て構造改革を進める。この道のほか、道なし。確信しています。

 

In short, Japan is right in themiddle of a quantum leap.の訳を見ると、この訳者はやっぱり駄目だなあという気がしてしまう。Inshort (「要するに」)を省いているだけではなく、a quantum leap 「クォンタム・リープ(量子的飛躍)」と訳してしまっている。「」を使う場合は、英語の原文に引用符がある場合である。ここは単に「飛躍的発展」と訳せば、こんな不細工な訳にならずに済んだものと思う。

 

our sense of speed は日本語の原文では、「スピード感」になっていたのではないだろうか。ひょっとしたら、日本語の原稿は、安部首相自身が書いていたのかもしれない。それを担当者が our sense of speed と英語に翻訳したのだろう。しかし、この文脈では、itsspeed とした方がよいだろう。

 

よく分からないのがTINAである。There Is No Alternativeという文を構成する語の頭の文字をくみ合わせた語である。NATOとかよく知られた語はあるが、TINAなどというacronym(頭字語)は聞いたことがない。ここは原文でも、そのままThereis no alternative. とすれば良かったのにと思う。とにかく、読んでいてawkward な感じがする。That's TINA:の箇所は余計である。

 
(続く)