🔵東洋思想◇孫子の兵法7 メモ
「軍争篇」
戦闘の心得。戦闘において勝利と敗北は紙一重。正奇の組み合わせと静動の運用により、合理的勝利を掴む。
「迂直の計」。自然法則の観察から生まれた。「縮めたければ、まず伸ばしてやる。弱めたければ、まず強めてやる。奪いたければ、まず与えてやる」。
「迂(う)を以って直となし、患を以って利となすにあり」(回り道をしながら直進し、損をしながら得をする)
迂回したかと見せて直進したり、奇襲をかけたかと思えば正攻法で攻める。
陰と陽、静と動。騙しながら戦いを有利に導く。
一見こちらが損に思える事は、敵にとっては有利に思える事なので、そこに食いついてきやすい。その裏をかく。
もちろん、相手の事を十分調べておく。敵国の謀(はかりごと)を知らずに兵を動かすのは危険。敵の国の地理を知らなければ、そこへ自軍を向かわせる事はできない。
「故に兵は、詐(さ)を以って立ち、利を以って動き、分合を以って変をなす者なりれ(戦いは、敵をあざむく事で始まり、有利な方向へ動き、兵の分散と集中を繰り返しながら変化する)
戦術の根本は、敵をあざむくこと。
行動の決定は、敵を欺くことによって作り出された有利な状況の中で行われる。
その行動は分散集中変幻自在でなければならない。
「故に、其の疾(はや)きことは風の如く、其の徐(しず)かなることは林の如く、侵掠(しんりゃく)することは火の如く、動かざることは山の如く、知り難きことは陰(かげ)の如く、動くことは雷霆(らいてい)の如し。
郷を掠(かす)むるには衆を分かち、地を廓(ひろ)むるには利を分かち、権を懸(か)けて動く。迂直の計を先知する者は勝つ。此れ軍争の法なり」
(疾風のように早いかと思えば、林のように静まりかえる、燃える炎のように攻撃するかと思えば、山のように動かない、暗闇にかくれたかと思えば、雷のように現れる。兵士を分散して村を襲い、守りを固めて領地を増やし、的確な状況判断のもとに行動する。
敵より先に「迂直の計」を使えば勝つ。これが、勝利への道だ)
戦闘とは、敵の村落を襲撃して人的資源を奪い、敵地を占領して物的資源を奪う。
ただし、いくら「疾きこと、風の如く」でも、ただ単に急いではダメ。
「百里にして利を争えば、則ち三将軍を擒(とりこ)にせらる」(百里の遠征をして勝ちを急げば、全員が捕虜になってしまう)
勝ちを急ぐばかりに、昼夜を問わず行軍したりすれば、当然集団の統率は取れない。
重装備のまま全軍で進めば遅くなり、かと言って軽装備で行けば装備を運ぶ輸送集団が遅れる。
軍隊が分散されると、それだけ少ない兵で戦わなければならない。遠征をする時は、その危険を充分考慮して移動しなければならない。
「衆の耳目を一つにする」
夜はかがり火と太鼓を増やし、昼間は旗を用いて兵士の指揮をとって大軍をまとめる。
兵士の目と耳に働きかけ、お互いの連絡を密にして、組織としての力を発揮させる。
敵を制御する四つのポイント
1.気(士気)
「その鋭気を避けてその情気を撃つ」
敵のリズムを読み取り(敵の元気のある時を避け、士気が下がった所を見計らって撃って出る)
2.心(心理)
「治を以って乱れを待ち、静を以って譁(か)(軽はずみに来る)を待つ」(態勢を整えて、静かに敵の乱れを待つ)
3.力(戦力)
「近きを以って遠きを待ち、佚(いつ)を以って労を待ち、飽を以って鐖(き)を待つ」
(有利な場所に陣取って敵を待ち、コチラは休息をとって敵の疲れを待ち、食事して相手が飢えるのを待つ)
4.変(変化)
「正正の旗を邀(むか)うることなく、堂堂の陣を撃つことなし」(充分な自信と準備をもって攻撃してくる敵に対しては、正面衝突することなく、奇策を用いて意表をつく)
上の3つ「気・心・力」はいずれも敵の乱れや弱点を突くということ。勝算がなければ戦わない事、それは逃げる事ではなく「変化」するという事。
戦闘に際しての八つの「べからず集」。
1.「高陵には向かうことなかれ」(高い場所の敵を攻撃してはダメ)
2.「丘を背にするは逆(むか)うことなかれ」(丘を背にした敵を攻撃してはダメ」
3.「佯(いつわ)り北(に)ぐるには従うことなかれ」(わざと逃げる敵を追ってはダメ)
4.「鋭卒には攻むることなかれ」(ヤル気満々のヤツを攻撃してはダメ)
5.餌兵には喰らうことなかれ」(餌に飛びついてはダメ)
6.「帰師(きし)には遏(とど)むることなかれ」(帰ろうとする敵を止めてはダメ)
7.「囲師(いし)には必ず闕(か)き」(囲む時は逃げ道を作っておく)
8.「窮寇(きゅうこう)には迫ることなかれ」(窮地に追い込んだ敵になお迫ってはいけない)