ワンちゃんが顔や手を舐めてくる行為に、心をくすぐられる飼い主さんは多いのではないでしょうか。しかし、その行為には理由があり、愛情表現のほかに注意すべきこともあります。今回はワンちゃんが飼い主さんの顔や手を舐める理由や止めさせたいときの対処法について解説します。


 

ワンちゃんが飼い主さんの口や手を舐める理由

ワンちゃんが顔や手を舐めてきたとき、思わず顔がほころんでしまう飼い主さんは多いのではないでしょうか。

 

ここで着目したいのは、ワンちゃんがひとの顔や手を舐める行為には、さまざまな理由があるという点です。

 

かわいらしい行為ですが、理由のなかには、ワンちゃんが置かれている状況がネガティブなこともあります。

 

それでは、ワンちゃんがどのような理由から飼い主さんの顔や手を舐めるのか、詳しくみていきましょう。


 

飼い主さんへの愛情表現・コミュニケーション

ワンちゃんは飼い主さんへ、「大好き」という気持ちを伝えたくて舐めることがあります。

 

また、飼い主さんとの絆をより深めようとして、コミュニケーションのために舐める行為をするともいわれています。

 

どちらの理由にしても、飼い主さんとの信頼関係が築けているからこその行為です。


 

ごはんやおやつの催促

パピー期に母犬に食べ物をねだるため、母犬の口周りを舐めて催促していた行為の名残りとも考えられています。

 

信頼している飼い主さんのことを母犬の代わりだと思っているのかもしれませんね。


 

飼い主さんの口からおいしそうな匂いがするから

ワンちゃんは好奇心から、食事をしている(したあと)の、ひとの口から漂うおいしそうな匂いが気になって仕方がありません。

 

「飼い主さんは何を食べている(いた)のかな」と、ワンちゃんは舐めながら想像しているのでしょう。

 

においを嗅ぎ取り、舐めることで情報を得ているのですね。


 

飼い主さんがよろこぶから

以前に飼い主さんの顔や手を舐めたときによろこばれた雰囲気を覚えているのでしょう。

 

ワンちゃんは、飼い主さんがよろこんでいたときのことを記憶しています。

 

そのため、顔や手を舐めたらよろこんでもらえると学習し、繰り返し行うようになります。

 

または、何かしらの理由で叱られたとき、「許して」の気持ちから、飼い主さんの顔や手を舐めることもあります。

 

舐めると飼い主さんの表情が和らぐということも学習しているのですね。


 

不安・ストレス・恐怖心があるから

ワンちゃんは不安やストレス、恐怖心を感じたとき、その気持ちを伝えようとして、飼い主さんの口周りを舐めることがあります。

 

また、自分を落ち着かせようとして、飼い主さんの口を舐めることもあります。

 

お留守番の前後や、雷や花火などの大きな音を聞いたときに、舐める行為をするワンちゃんもいます。

 

舐めながら体を震わせていたり、ソワソワしていたりするときは、撫でながらやさしく声をかけてあげましょう。


 

 

ワンちゃんがひとの口や手を舐めるときに注意すること

 

ワンちゃんが顔や手を舐める行為は、とても愛らしいと感じますが、注意しなければならないことがあります。

 

飼い主として知っておくべきことを2つ詳しく解説します。

 

人間から犬、犬から人間に移る病気がある

人間から動物、動物から人間の間で移る「人獣共通感染症(ズーノーシス)」と呼ばれる感染症があります。

 

人獣共通感染症(ズーノーシス)の中でも代表的な感染症は、狂犬病、パスツレラ菌、瓜実条虫症などが挙げられます。

 

これらに感染しているワンちゃんに舐められる、噛まれるなどすると、ひとは感染してしまう可能性があります。

 

しかし、人獣共通感染症(ズーノーシス)は、予防によって感染を避けることもできます。

 

例えば狂犬病の予防接種です。

 

狂犬病予防接種は年に一度、ワンちゃんを飼育する飼い主さんに法律で義務付けられていて、高い予防効果があります。

 

ほかにも、ワクチン接種やノミ・ダニ・フィラリアの予防は欠かせないことです。

 

感染のリスクをできるだけ回避するために、必要な予防をすることは、ひととワンちゃんが一緒に暮らすためにとても大切です。

 

ここまでご紹介した通り、ワンちゃんからひとへ感染する病気があることがわかりました。

 

体の弱いひと、病中病後のひと、基礎疾患があるひとは、健康体のひとよりも感染する可能性が高いといわれています。

 

感染症は予防によって避けられる可能性があるので適切な対応をしましょう。


 

参考サイト:国立感染症研究所『人獣共通感染症 (niid.go.jp)


 

飼い主さんは食後の顔や手の状態に気を配る

ワンちゃんは、口にしてはいけない食べ物が多数あり、代表的なものだとチョコレートや玉ねぎなどのネギ類が挙げられます。

 

もし、飼い主さんの口周りや手にチョコレートが付いていて、それをワンちゃんが舐めてしまうと、中毒症状を起こしてしまう可能性もあります。

 

食後にワンちゃんと触れ合うときは、顔周りを鏡で見たり、手洗いをしたりするように習慣化しましょう。

 

 

ワンちゃんが顔や手を舐めるのをやめさせる方法

ひと懐こいワンちゃんだと、飼い主さんだけではなく、家族以外のひとの顔や手を舐めてしまう子もいますよね。

 

しかし、衛生上の問題や家族以外のひとの心情を考えると、やめさせたいと思っている飼い主さんもいるのではないでしょうか。

 

では、具体的な対策法をご紹介します。

 

口元を隠しながら黙ってその場から離れる

ワンちゃんが口を舐めようとしてきたら、口元を手で隠し、黙ってその場から離れることを繰り返し行ってみてください。

 

その際はゆっくりとした動作で行うことがポイントです。

 

繰り返し行うことで、やがてワンちゃんも「口を舐めようとすると、飼い主さんが離れてしまう」と学習し、やめる可能性は高くなるでしょう。

 

とても根気が必要になりますが、やめさせたいのであれば飼い主さんも我慢のしどころです。


 

獣医師などに相談・しつけ教室の利用

根気よく、やめさせようと努力を続けても、ワンちゃんがやめてくれない場合は、獣医師や訓練士、ペットシッターなどのプロに相談することをおすすめします。

 

プロのノウハウを伝授しもらうことで、ワンちゃんに合った対処法がみつかる可能性があります。

 

また、飼い主さんが行き詰まる前に、しつけ教室やワンちゃんの幼稚園を利用してみるのもよいでしょう。


 

まとめ

ワンちゃんが飼い主さんの顔や手を舐める理由には、次のような気持ちが現れていることがわかりました。

 

・愛情表現、コミュニケーション

・ごはんやおやつの催促

・飼い主さんの口からおいしそうなにおいがするため

・飼い主さんがよろこぶため

 

飼い主さんのなかには、ワンちゃんが顔や手を舐めてくる行為をかわいらしくてたまらないと思うひとも少なくないでしょう。

 

しかし、抱えている不安やストレスを紛らわせるために、飼い主さんの顔や手を舐めるワンちゃんもいます。

 

あまりにも頻繁に舐めてこようとするときは、獣医師に相談することをおすすめします。

 

そして、ワンちゃんから飼い主さんへ、飼い主さんからワンちゃんへ移してしまう病気があることも忘れないでください。

 

スキンシップをするならば、優しく撫でたり、抱っこしたりなど、顔や手を舐めること以外の方法で行うようにしましょう。