「20代の男性です。本日、16時ごろ家族が首つりの現場を発見。すでに瞳孔は散大しており、紫斑も見られます。救命は不可能と思われますが、先生のご指示をいただきたく思います。」「救命は不可能と考えます。」「ご家族を説得して、不搬送とさせていただきます。」後ろで家族の泣き叫ぶ声があまりにリアルだった。
内視鏡室。薄暗い部屋で、寝巻を着た患者の口に管を突っ込む。嘔吐反射を繰り返す患者の横で画面を見ながら管を操る医師。検査が終わり患者が退室したら、「なんでこんなことして癌見つけちゃうのかな。俺は癌なんて見つけない。俺に癌が見つかった時は、もう末期。入院なんてなるべく少なく逝くよ。」と消化器内科の医師が言った。
大きく普遍的な意味を人は求めようとするが、それはあまりかしこいとは言えない。”あなたは明日死にます”と言われたら「あ、ちょっとびっくりだけどそうなんですね。了解。」とこたえられるように。