21才になって正月休みの頃
隣町のテレクラに行ってアポが取れて
ウキウキで外に出て階段を降りると
あまり関わりたくない
近隣中学でも評判のよろしくなかった
顔見知りの なんちゃんが
車から顔を出して俺を見つけ
「よー久しぶり」と声をかけてきた
と同時に
後部席いた やあさん風の人に
「よ!知り合いなら少し乗れ」と
声をかけられ
この「少し」だけで
解放されると思ってそのBMWに
乗ってしまったのだ
車内に乗ってすぐ
「テレクラのスタッフか
金融屋の仕事をやらないか」と
誘われて
ほんとバカなのかお人好しのなのか
あやりたいですと言ってしまい
「俺はケントよろしくな」と
後には引き返せない
挨拶を受けてしまう
なんちゃんの運転はとにかく下手くそで
おれ運転しようかと言ったら
ケントさんに
「お前運転しろや」とその後
ずっと運転する事になってしまうが
自衛隊のあとからは
軽貨物、2トン車、ユニック、4トン車と
運転手をやってきていたので
全然苦ではなかった
結局
当時のトラック運転手の仕事には
連絡もせずに行かない形にしてしまっていた
このケントさんI会の地方の一家の組の
まだ20代なのに稼ぎ頭で
このBMWと青山にも別宅を所有して
なんちゃんを囲い
俺を運転手にして
そこそこの身分で
別宅にはいつもAV女優のMが
やってきてクスリをやっていた
この時貰ったMのサインは
まだもっている
しばらくは
新宿にある事務所と地方の事務所を
行ったり来たりの運転だけの業務だった
新宿の事務所は所謂闇金と言われる
金貸し屋で
この新宿の事務所兼金融屋の持ち主は
そのケントさんのさらに上の役職で
のちに闇金の帝王と呼ばれた
金山さんの1号店でもあって
所謂企業舎弟と言う間柄でもあった
ある日
組の頭と言う人が
刑を終えて出てくる事になり
ケントさんと金山さんなおちゃん乗せ
待ち合わせ場所には20台以上の車で
大雨の中宮城まで向かう事なった
この日初めて
金山さんを乗せての運転だったが
この大雨中運転を評価されて
その時オープン間もない
2号店スタッフに就ける
お話しもいただけたのだが
ケントさんはいい顔をしていなかった
そして翌日の
二人になった運転中のとき
金融屋の話しを切り出したとたん
「車を止めろ」と
左に寄せ 後部席から降りてきて
左側の俺の方のドアを開けて
いきなり数発顔面を蹴られ
そのうちの一発が
眼球を強打して出血
血の色越しの赤色のケントを睨み
ブチギレ寸前の瞬間
キレたら殺されるかもと過り
思いとどまった
とりあえず後部席で横になり
ケントが運転して
病院にも行かせてもらえず
やり過ごされた
自分は
ただのやくざもんの運転手で
契約した訳でも
盃を交わしたわけでもない
あなたから
「金融屋の仕事がある」と言った事を
ただ言っただけなのに
目の腫れも治ってきたある日
ケントから「お前墨入れろ」と
強制的に命令され
抵抗もせず言うがまま
デザインの本を見せられていたが
その時目についた「"鯉"でいいじゃんと」
勝手にデザインを決められ
勝手に予約を入れられてしまう
ケント知り合いの彫り師に行く
その当日
自分とは別行動だったケントが
銃刀法違反で逮捕されたと
なんちゃんから聞かされ
それで
刺青を入れずに済んだ。