プロローグ
遙か彼方まで広がる闇。
数多に輝く星の光をも飲み込んでしまいそうな虚空を
一隻の船が、今にも暗闇に溶けてしまいそうなほど頼りなさげに航海を続けていた。
「パターン1から108までオールクリア。」
「ゲート1から7までパージ。スタンドアローンモードへ移行完了しました。」
「第一実験区画、モニター異常なし。」
大小様々なスクリーンが浮かぶメインブリッジで
各フロアからの報告が飛び交う。
それら全ての報告を一つ一つ確認するように
髭を蓄えた艦長らしき男が、人差し指で静かにデスクを叩いていた。
「全ケース、オールグリーン。」
「よし、実験を開始しろ。」
オペレーターの言葉に応じながら男は立ち上がった。
「はい!ジェネレーター起動!エーテル放出します!」
「エーテル率、臨界点に向け上昇中!」
「臨界点突破まで300!」
「臨界点突破!」
「ダークマター検出!濃度上昇していきます!」
突然、映像が乱れ始め、計器類の針は右に振り切れ
あらゆる数値が捕らえどころを失い、ランダムな数値を表示し続ける。
メインコンソールに赤い警告灯が灯ると同時に
至る所で警告を知らせる黄色いウィンドウが開きだす。
「エマージェンシーコール エマージェンシーコール」
無機質な女性の声がブリッジ中に響き渡り、緊急事態であることを知らせる。
「艦長!ジェネレーターの出力を抑えないとこれ以上は危険です!」
女性オペレーターの悲鳴にも似た報告に対し、艦長はピクリとも動かずじっとモニターを見つめている。
「艦長!これ以上は…」
「モニター乱れてるぞ!ノイズが邪魔だ!」
「現在ノイズキャンセラー稼働中です!まだ少しかかります!」
「ちっ!急いで…───────」
「ダークマター、検体を中心に収束していきます!」
「モニターまだか!!」
「……ノイズ除去完了!回復します!」
オペレーターが言葉を発したのとほぼ同時に、モニターが白い輝きを取り戻す。
まるでその光が音を飲み込んだかのように、ブリッジは静寂に包まれた。
誰もがその白い光の中心で蠢く黒い影に目を奪われていた。
一瞬とも永久とも思える沈黙の後、
少しだけかすれた声で艦長らしき男が言葉を漏らし始めた。
「───…素晴らしい…。」
「見よ…これが…これこそが…」
「『神』だ───」
