平日の火曜日、
私は、浅草へ戻りました。
週末、渋谷デビューの
覚悟を決めていたせいか、
自分から変わろうという、
意識で満ちておりました。
生来、不愛想で仏頂面ですが、
とにかく口角上げろ、上げろの、
山下美月作戦（注※①）を敢行。
次に、歯を出せ、歯を出せと、
常に意識し、継続しました。
無論それで、訪問者が
飛躍的に増加するわけでは
ありませんが、
その表情のまま、
とにかく能動的に動くことを、
心掛けました。
通常は白紙状態のホワイトボードには、
知られていない四字熟語の意味や、
漢字のこぼれ話など、
軽く信号待ちで読める、
気楽な内容を書き込んだり、
日傘を持たない女性コンビが、
信号待ちをしていると、
そっと日傘で日陰を提供、
「只今、日傘無料サービスを
美人限定で実施しております。
美人だけです、美人だけですよ、
・・・・何事にも例外はあります・・・・」
さらに、デビューしたばかりの、
新人人力車スタッフの若者に、
こちらから話し掛け、
大阪商人倅直伝、
客引きセールストークのお手本を示します。
「当人力車は、エアコン完備です・・・嘘です
当人力車は、本革シートです・・・・嘘です
当人力車は、人が引っ張ります・・・本当です」
こんな具合に、絡めるチャンスは
決して逃さず、笑え、動けをモットーに、
３時間を過ごしていると、
アジア系カナダ人青年が、
話し掛けてきました。
どうやら私と写真が撮りたい様子。
勿論、オブコースと承諾。
捕まえたら、逃がしません。
無料ですから、損はしません。
彼らの名前を漢字表記していると、
その様子を、理知的な雰囲気がする、
初老の女性が注視しており、
書き終わった後、言葉を掛けてくれました。
「あなたは素晴らしいことをしているわ」
有難い言葉に私は、
深く頭を下げて礼を述べました。
（注※①）元・乃木坂４６三期生でエース。
生来、不愛想だった彼女はアイドルらしくなろうと、
起きている間はずっと、口角を上げ続けたという伝説があります。
＜続く＞ バッタもん