外国人観光客もまた、
芳しい反応はありませんでした。
まあ、そうでしょうよ。
こんなチンピラ丸出しの輩など、
簡単に信用されるわけがなく、
無反応など、半ば必然だからです。
私がホワイトボードを立てた場所は、
日陰ではなく、人の少ない、日なた。
この時のために通販で購入した、
晴雨兼用大型傘を差さずに
立ってはいられません。
スーツが褪色しそうなため、
わずかですが日陰となる、
オブジェ的な灯篭の陰が、
いつしか私の立ち位置となりました。
暑い・・・・並大抵の暑さではありません。
スラックスの中を汗が流れるのを感じます。
東京の暑さもまた並大抵ではありませんが、
東京は、夕立などの通り雨が多いため、
正直、大阪の暑さの方がヒドイです。
大阪の夏。
脳裏に忌まわしい過去が蘇ります。
午後仕事の出荷場所が郊外へ変更され夏、
二番目にゲート入りだった我が社の
担当コーストラックは、
直射日光を正面から受ける場所が
待機場所として指定され、
拒むことなどできませんでした。
当時、私は固有名詞の勉強を開始したばかり。
特に難しかったのが、外国名の漢字表記。
周囲を日当六千円のケロヨン達に囲まれ、
低俗会話や、スマホのパチンコ情報番組の音声という、
騒音から苦しめられつつ、汗をダラダラ流しながら、
トルクメニスタン・ブルキナファソ・ヨルダン・
スロバキア・スロベニア・イエメン・レソト
などと書き続けた日々。
暑さと低レベルな環境、
そして自分と闘った時間。
そんな劣悪な環境が思い出されました。
どちらでもいいぞ、
どちらでも好きな方を選べ。
私は、自分にそう問いかけました。
刑務所へ戻り、
ドブの悪臭を嗅いで過ごせば、
テレビが観られます。
乃木中を録画できます。
スカパーの外国ソフトを満喫し、
NFLもMLBを観戦し放題。
どちらがいい?
そうです、東京の街頭がいい。
なぜなら、漢字を書かせてもらえるから。
私は、書きたいのです。
人前で漢字を、それが鍛え上げた、
本能が欲するモノだからです。
<続く> バッタもん