私はついに、上下黄色のスーツに
黒いシャツ、阪神タイガースネクタイ、
という格好で、東京の街に立ちました。
「Please let me write your name japanese.」
(あなたの名前を日本語で書かせてください)
※<後にnameの後ろに、inが必要と判明>
“free of charge”(無料です)
看板は、二種類。そして私の名前。
私は、ついにデビューを果たしながら、
実は内心で戦々恐々としておりました。
それは、外国人観光客の反応などではなく、
地域、街、地元民達の反応を、
恐れていたのです。
仮にもう浅草へ来られなくても
構わないと開き直ったものの、
だからといって、
別にトラブルを好んではおらず、
何事もないに越したことはないからです。
周囲の反応、普通でした。
というか、自然。
場の完全支配者、地元企業の先兵であるべき、
複数の人力車スタッフ達も、ただの景色として
自然に受け入れてくれ、
二週間通い、面を覚えてもらった努力は、
どうやら無駄ではなかったようです。
彼らだけではありません。
目の前は観光案内所。
当然、スタッフは行政関係者。
彼らも、地元の商店関係者も、
警察官さえも、全く無反応。
ええ、お咎めはゼロ。
なぜでしょう?
東京の主な繁華街では、
特に路上ライブには神経質。
騒音問題だけでなく、
彼らは自主製作CDの販売までするので、
行政も警察もピリピリしていますが、
浅草は、無頓着。
なぜでしょう?
それはきっと前例が無いから。
誰も路上パフォーマンスを
行ってこなかったのでしょうか?
内心で、胸を撫で下ろして
いました。
しかし、無反応は、
彼らだけではなく、
大切なお客、外国人観光客も同じ、
全く無反応だったのです。
<続く> バッタもん