浅草・雷門、観光案内所前。
気温もさることながら、
物凄い熱気に圧倒されました。
行き来する、多くの観光客の間を、
浅草名物、人力車の客引き兄さん達が、
練り歩き、
とても新参者である私が、
何かを始めるような雰囲気には
ないのです。
帰りたい。
これが偽らざる、本音です。
けれど、引き下がることは、
出来ないのです。
もう、戻るべき橋は、
すべて燃やしてきました。
退路は断っており、
進むしか術はないのです。
けれど、完全なAWAY。
正直、手も足も出ない、
というのが、実感でした。
しばらく、アンパンマン・レジャーシートに
包んだホワイトボードを抱え、成す術なく、
立ち尽くしました。
けれど、ロケハンをした結果、
どう考えても、浅草しかありません。
渋谷、新宿などにある、棘が
この街には無いのです。
空気が緩やかにして穏やか。
東京繁華街としては新参者に過ぎない、
渋谷と新宿にある危うさが微塵もない、
老舗のゆとりが街全体を覆っており、
雰囲気はどこまでも和やかなのです。
海外旅行ハイ状態で浮かれる、
日本ズレしていない、
外国人観光客を捕まえるのに、
これ以上の場所は存在しません。
ここから追い出されたら、
正直、他に行き場がありません。
その時、気がついたのです。
あまりの事を、性急に進めようと
しすぎている、と。
生来、せっかちである、
私の悪い習性のひとつと
断言できるでしょう。
私は、観光案内所前に立ちながら、
現状を冷静に把握することに、
努めていました。
<続く> バッタもん