レンタカーに

 家財道具一式を積み込んだ私は、

 一路東へ向かいます。

 

 行きとは違い、

 天候は安定しており、

 交通量も少なめ。

 

 しかし、これまで数え切れぬほど、

 運転地獄を味わってきた私にとっても、

 

 この夜だけは、

 特筆すべき苦しさでした

 

 三トントラックに八トン積んだ過積載や、

 猛吹雪や凍てつく峠道ならば、

 

 むしろ恐怖から、

 睡魔は遠ざけられます

 

 けれど、ガソリン車にしてAT、

 この快適さが、

 むしろ睡魔を増長させるのです。

 

 ありえない頻度での

 休憩を余儀なくさせられます。

 

 吹田・草津・多賀・養老ですから、

 全く考えられません

 

 こうでもして仮眠をしないと、

 とても瞼を開けていられません。

 それほどの睡魔、なのです。

 

 中央高速へ入ってからも、

 休憩の頻度は変わらず、

 

 SAへ入る、レンジをPへ、

 サイドブレーキを引き、

 エンジン停止。

 

 次の瞬間、もう目を閉じています。

 この程度の仮眠を10分ほど取り、

 ようやく走行可能状態へ戻るのです。

 

 友人宅もよりIC近くのPAが

 どれほど遠く感じたことか・・・、

 本当に長い夜、でした。

 

 信州の爽やかな早朝の風の中、

 無事にテレビを渡し、

 朝食までご馳走になり、

 

 友人の助言に従い、中央高速の名物、

 上り渋滞を確実に避けられる、

 時間に出て、都内へ。

 

 こここそが、私にすべてを教えてくれる街、

 東京なのです。

 

 自分が何者になれて、

 何者にはなれないのかを。

 

 ある者はすべてを奪われ、

 ある者はすべてを得られた街。

 

 自分の存在がどれほどの価値なのかを、

 額面通り、情け容赦なく教えてくれる街。

 

 ここでなければならないのです。

 ここでしか知りえない真実を包含する、

 日本で唯一の町なのですから。

 

 無事に渋滞もなく、首都高へ辿り着き、

 ナビに従い羅生門へ着いたのは、

 丁度、正午頃でした。

 

 荷物を下ろしながら、

 その日の日差しの強さを

 感じていました。

 

 酷暑・大阪でノンエアコン生活を、

 実に15年も過ごした私は、

 

 大嫌いですが、実は相当、

 夏には強く、バテ知らず。

 

 しかし・・・・。

 

 容赦のない日差しを浴びながら、

 この夏が人生で一番熱く、

 

 なにより忘れられない夏になると、

 確信を抱いていました。

 

 <続く>        バッタもん