むかしむかし、あるところに、まじめなクツ屋がいました。


 クツ屋は毎日まじめに働いているのに、だんだん貧乏になってしまい、とうとう一足分のクツの皮しか残らなくなりました。


「ああ、これでクツを作るのも最後か」


クツ屋はその最後の皮をクツの形に切って、その日は寝てしまいました。

 
次の日の朝、目を覚ましたクツ屋はビックリです。


何とクツが一足、ちゃんと出来上がっていたのです。


そのクツはとても素晴らしい出来だったので、とても高い値段で売れました。


クツ屋はそのお金で、二足分の皮を買いました。


そしてその皮をクツの形に切ったところで、また寝てしまいました。


すると次の日の朝にも、立派なクツが二足出来上がっていました。


それからは毎日、同じ事が続きました。


二足のクツが四足になり、四足が八足、八足が十六足、十六足が三十二足・・・と、どんどんクツが増えていったのです。


おかげでクツ屋は、すっかりお金持ちになりました。


ある日、クツ屋はおかみさんと一緒に、一晩中起きている事にしました。


誰があの素晴らしいクツをつくっているのか、確かめようと思ったのです。


夜中になると、どこからか裸の小人が二人現れました。


二人の小人は小さな手で素早く皮をぬい、叩いて形を整えると、あっと言う間に素晴らしいクツを作り上げました。


次の朝、おかみさんがクツ屋に言いました。


「ねえ。クツをつくってくれたお礼に、あの小人たちに服をぬってあげようと思うの。


だって裸じゃ、寒そうだもの。


だからあなたは、小人にクツをつくってあげたら」


「そうだね。そうしよう」


次の夜、クツ屋はクツの皮の代わりに、おかみさんがぬった小さなシャツとズボンとチョッキと、クツ屋がつくった小さなクツとクツ下を二人分置いておきました。


すると小人たちは大喜びで服を着て、そこら中を飛びはねながら歌いました。


♪これで、ぼくらは可愛い小人。


♪もう、クツ屋じゃ、なくなった。


そして外に出て行き、そのまま二度と現れませんでした。


小人はいなくなりましたが、それからもクツ屋のクツは飛ぶ様に売れ続けて、クツ屋は幸せに暮らす事が出来たのです。


お~しまい