さて、読書感想文というものに手を染めます。


最近週末とか平日夜に気がついたら本を手に取る生活を送っています。


日本で大量に買いだめてたけど、結局じっくり読めずじまいになってた本のうち、

厳選した一部を船便でスイスまで送っていたので、実は蔵書はそれなりにあるのです。

とは言っても小さな本棚に全部納まってしまう程度ですが。


このたびようやく読破したのは

三浦篤著 「まなざしのレッスン 1. 西洋伝統絵画」 (東京大学出版会)


この本はたぶん4年位前に買ったんですが、

もちろん興味があって買ったはずやのに、

最初の2章読んだあたりで何となく放置してしまってた本なのですね。


内容は簡単に言うと、

18世紀までの欧州の伝統絵画を取り巻いてた社会状況、思想、その他の理解を前提に、

じゃあその中で伝統絵画の約束事ってなんだったの??ってことを

恐ろしくわかりやすく丁寧に解説してくれる本です。

これらのポイントを押さえたら当時の分かりやすいようでよく分からん絵画の見方が変わりますよー、

と今まで踏み込みにくかった世界に向って優しく背中を押してくれるような感じですね。


それが、単純に知識をつけるだけの目的でももちろん入門書としては十分素晴らしい本ですが、

何より、つかみどころの得難い当時の絵画文化の断面を鮮やかに見せる一編一編の章が、

本全体で詩を構成しているようで、

恣意的な断面設定の中でも絵画自身がその間をするすると行き来して、

単純な定義を拒む有機的な文化世界がいきいきと文章の中から立ち現われて来るようで。


それと同時に筆者の三浦先生が絵画鑑賞が好きでたまらんっていうのが

すごく素直に文章に出ていて、

笑いかけられたらこっちもにこっとしちゃうよ、っていう雰囲気が常に漂う文章で、

それもまた読んでて楽しいポイント。


ちなみに実は三浦先生の授業は学部生の時受けていて、

口語調の文章が三浦先生の声で頭の中で響きながらの読書でした笑


個人的に読んでてなるほどと思わされたのは、

プッサンの「フローラの王国」を軸に展開した神話画のくだり、

ボッティチェリとこれまたプッサンあたりの寓意画のくだり、

今まで何も知らなかった静物画のくだり、

あたりでしょうか。


無理やりまとめると、

顔料をキャンバスの乗せる技が、

造形構成、マチエール、題材設定、寓意の設定を有機的な関係につなぎ合わせて

universeを表象するに至る、と言いつつ、、

でもでも約束事を知るだけで同じ絵画という人工物が

与えてくれる宇宙的に広い世界を覗く快感を読者と共有したいんだよー、という本です。


かなりおすすめですよ。

よかったら是非。