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グローバルに通用する異能を開花する 【大前研一通信・特別保存版 Part.Ⅷ】/ビジネス・ブレークスルー
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い‐のう【異能】
人よりすぐれた才能。一風変わった独特な能力。異才。「―を示す」「―の人物」
震災以降、混迷や狂騒がそのまま日常となってしまった感のあるわが国だが、これは空気が漏れたゴム風船がほんの一瞬、部屋中を飛び回った挙句、箪笥の上や蛍光灯の笠に引っかかって萎びていく様に例えることができるのかもしれない。
今の時代とは、空気を読むことばかりに血道を上げていた日本人のその「空気」が加速度的に抜けている時代なのかもしれない。
大前研一氏はそれを様々なデータと自身の経験とロジックで読者に示す。
“つまり、この国は三十年経っても四十年経っても労働人口は増えず、高齢化だけが進んでいく。”
ゴム風船が萎んでいく。この国の空気が抜けていく。
フランスのような少子化対策も現行の戸籍制度が立ちはだかり見通しは暗い。
だからと言って、移民政策も上手くいきそうにもない。
地方創生と銘打っても未来の廃虚を作るために交付金は消えていく。
現状維持など夢のまた夢。そんな夢を見ている間にもゴム風船の空気は漏れ続けている。債務はすでに千三百兆円を超えている。
いつデフォルトが起こってもおかしくない。
いつハイパーインフレが起こっても不思議ではない。そのときあなたの銀行預金は紙くずになる。
ハイパーインフレを避けるためには、「戦争」「歳出削減」「大幅増税」のどれかを選ばなくてはならないらしい。(現政権の支持率があまり下がらないのはこんなところに理由があるのかもしれない)
詳細は本書を読んでもらうとして、要するにこの国は変わらない限り、どのみち萎びていくであろうという話だ。そんな国、あるいは霞ヶ関と、硬直したシステムと心中するのかという話だ。
もちろんその先の話もある。そして、それが本題だ。
黄昏いく国にいてその暗さを嘆く暇があるなら明るい国に出よと氏は言う。実にシンプルだ。
「グローバル化」の本質とはこんなところにあるのだろう。「市場化」と言い換えた方が分かりやすいかもしれない。
「市場」と言うと、カネの話かと警戒したり煙たがる人もいるかもしれないが、それだけではない、と個人的には感じている。
かつて藤原新也はインドの光景だったか、その著書中のバザールの写真に「市場があれば国家は不要」というキャプションをつけたが、今の世界はそんな「バザール化」のプロセスのただなかにあるように思える。
グローバル化ではなく、バザール化。
「ビジネスパーソン」とは縁も所縁もないおれはこちらの方がしっくりと来るし、「バザールに通用する異能」と言われた方が分かりやすい。
そう。バザールでは何でも売っている。本物から偽物まで。財宝からガラクタまで。モノだけではない。喜劇から悲劇まで。そこではあらゆるレベルのエネルギーが渦巻いている。
そのバザールのチケットは英語だ。これは今のところ動かしがたい流れとなっている。「けっ!しゃらくせえ!笑わせやがる」と言っても通用しない。
努力の末、チケットを手に入れたあなたはバザールに足を踏み入れる。
そこでは誰が何を売ってもいい。ただし買い手がつけばの話だが。何も売れるものがないと途方に暮れる暇があれば「ゼロベース」から考えることだ。
バザール世界に出て、ゼロベースから考えるとき(ゼロベースから考えざるを得ないと思われるが)、われわれは知識獲得ばかりに偏ったわれわれ自身の「知力」不足に突き当たるかもしれない。おそらく突き当たるだろう。
知力不足の原因は言うまでもなく「教育」にある。われわれがこれまで受けてきた教育では「バザール」を生き抜くことはかなり困難だ。
もっとタフな教育が必要だ。異能を伸ばし磨くことのできる教育が必要だ。
大前氏はそんなプログラムのいくつかをわれわれに紹介する。国際バカロレア。モンテッソーリ。レッジョ・エミリア・アプローチ。どれも実に興味深いプログラムだが、注目すべきなのは今の日本の教育制度から見ると下手をすると、「役に立たない」教育と片付けられかねないプログラムであるということだ。(詳細は本書に見た目を通すなり、検索するなりして各自確認されたし)
いずれにせよこうしたプログラムと日本の現行の教育プログラムとを比較すれば、日本のそれは「バザール」を「グローバル」を念頭に置いていないことが分かるはずだ。
本書を読了した今思うのは、「異能」とはまず、自分自身の生を生きることから始まるということだ。英語はその後でいい。
自分自身の生を生き始めたあなたは遅かれ早かれ「バザール」に押し出される。