『 ゆみちゃんの宝物 』


    著者 : エリエリ





流れ星が降る街に、ゆみちゃんという女の子が住んでいました。


その街は夜になると、満点の星空の中、流れ星がキラキラと降ってきます。


暗闇の中で光るお星さまは、クリスマスのイルミネーションよりも、高台から見る都会のピカピカよりも、ずっときていで やさしくて 何かを話しかけてくれているようにも見えました。






ゆみちゃんは、大切にしている宝物があります。


それは、小さいころにお庭で拾った流れ星。


拾った時はただの石ころみたいになってたけど、降ってくる時は なんともいえないキラキラの光をはなって、 『こんにちは』 とでもいうように、ゆみちゃんの目の前に落ちてきました。







ゆみちゃんは、石ころみたいな流れ星が大好き!


さわると少しあったかくて、なんだか甘~い香りがします。


落ち込んでいるときに手に取ると、不思議とポワンと明るくなって、ゆみちゃんを元気づけてくれました。







ある日ゆみちゃんは、隣町の親戚のおねえちゃんのお家に遊びに行くことにしました。


おねえちゃんと宝物の見せあいっこをするためです。


ゆみちゃんが持っていくのは、石ころみたいな流れ星。


『おねえちゃんは何ていうかしら・・・♪』


ゆみちゃんは、ワクワクしながら おねえちゃんのお家に向かいました。







『こんにちは~!』


さっそくおねえちゃんに宝物を見せてもらったゆみちゃんは、びっくりしました。


それは、赤くてピカピカ光る宝石。


ゆみちゃんは、こんなにピカピカ光るきれいなものを初めて見ました。


そして、持ってきた石ころみたいな流れ星を見せるのが、恥ずかしくなってしまいました。







『ゆみね、宝物を持って来るの、忘れちゃった。でも、ゆみの宝物はもっとピカピカだよ!』


すると、ポケットに入れていた石ころみたいな流れ星が、大きな強い光で、ピカピカと光りだしました。


おねえちゃんも、ポケットから溢れるほどの強い光に気が付いたようです。


『ゆみちゃん、ポケットに何を入れてるの?』







ゆみちゃんは、流れ星を ポケットから取り出しました。


『こんなにきれいなものを見たのは初めてだわ!』


おねえちゃんは大喜びで見ていましたが、ゆみちゃんには流れ星が泣いているように見えました。







ゆみちゃんがお家に帰ると、流れ星は もとの石ころみたいな流れ星にもどっていました。


『流れ星さん、ごめんなさい・・・』


ゆみちゃんは、何度もつぶやきました。







その夜、石ころみたいな流れ星が、夢に出てきてこう言いました。


『ゆみちゃん、わたしをいつも大切にしてくれて ありがとう。わたしは宝石のように、ずっとピカピカ光ることはできないけれど、わたしの命をあなたにあげます。わたしは ゆみちゃんが大好き。いつもこの街の空から、ゆみちゃんのことを見守っています。』







目が覚めると、石ころみたいな流れ星はなくなっていました。


そして、ゆみちゃんのお腹は、風船みたいにプクーっと膨れていきます。


『うわー、どうなってるのー??』







ゆみちゃんのお腹の中には、赤ちゃんが入っていました。


流れ星からもらった命を、ゆみちゃんは大切に育てました。


そして毎日、お腹の中の赤ちゃんに話しかけました。


わたしの可愛い赤ちゃん、気分はどうですか?


わたしの可愛い赤ちゃん、早く元気なお顔を見せてちょうだい。


わたしの可愛い赤ちゃん、どうか無事に生まれてきてくれますように・・・・・







数か月後、ゆみちゃんは、元気な女の子を生みました。







無事に生まれてきてくれた。ただそれだけで、ゆみちゃんは一生分の親孝行をしてもらいました。


ありがとう。本当に ありがとう。。。


このあふれでる涙を、忘れてはいけないと思いました。


今日、ゆみちゃんは、大切なかけがえのない宝物を両手いっぱいに抱きしめました。







どんなにきれいな宝石よりも、わたしの指をぎゅっとにぎる あなたの手が。


どんなに高価なものよりも、わたしを探す あなたの瞳が。


こんなに、せつないほど大切だということ。


ただ息をすることに、こんなにも感謝の気持ちを覚えたのは初めてでした。







ゆみちゃんは誕生した大切な命に、美しい心の女の子になってくれますように との願いを込めて


‘‘こころちゃん‘‘ と名付けました。


つまずいても迷っても、心にちゃんと手を当てて、正しい目でみれますように。


大きな波がこようとも、心の声に耳を澄まし、まっすぐ前を向けますように・・・







今日も流れ星が降る街には、満点の星空の中、キラキラと流れ星が降ってきます。


ひとつひとつの命が、それぞれの光をはなって輝いていました。






エリ