今朝、不注意で膝を軽くぶつけて、さすっていた時に思い出した。

 

(重い話ではないので、軽く読んでくださいな)

 

 

今の診断がつく1年位前の話。

 

”この激痛はなんなのか?”

”どこに行っても原因不明。”が続き、

”世の中にはわからない事が多いというより、わかることが圧倒的に少ない”と、達観しつつある、秋の日。

 

その日も変わらず絶不調。

 

しかも、なぜだか身体に力が入らなくて、ヨレヨレになっている。

 

膝の腫れ・痛みが酷くて、近所の整形外科に通っていて、膝に水がたまっていたけれど、これもまた原因不明。

”先進国、という意味を再確認しなければならん・・・”

 

色々な意味で修行の身となり、そんな事を思っていても痛みはとれないので、とりあえず湿布をもらおうと、整形外科へ重い足を運んでみた。

 

 

 

そこは”街の整形外科”で、リハビリが主体であろう。

待合室も寄合の体(てい)あり。

 

大勢のお爺ちゃん・お婆ちゃんの中で、「どうなさった?若いのに」と聞かれ、

「膝に水がたまってしまって」とうっかり口を滑らせた。

 

もうそこは、水を得た魚たちが、我先にと泳ぎだす。

 

”膝に水が溜まる”というワードは世界を広げる。

 

会場はにわかに湧き立ち、やがてスピーカーより救いの声が聞こえ、益々ヨレヨレとなって転がるように診察室へ。

 

一通り問診を受け、”膝を見てみましょう”と言われて、診察ベッドへ倒れこむ。

 

その姿をずっと見ていたであろう看護師さん。

 

「身体に力が入らないの?」

 

「そうなんです。全身なんですけど・・・」

 

それを聞いていた先生が、「いつから?」と聞きながら、木の小槌みたいなものを手に、私の足元に立った。

 

ここで先生は、自分の能力を低く見積もっていた。

 

「痛くない方の膝を叩くから、力を抜くんだよ」

 

チノパンを履いていたので、膝の位置を手で確かめ、足元に立ったまま、手にした小槌で”ぱこーん!”と打つ。

 

ほぼ同時に”ガッ!”という、この場にふさわしくない音と共に、先生の頭がのけぞった。

 

先生が打った膝の場所は、”ここしかない”と見事に的を射て、私の膝下は期待に応えるべく、大喜びで跳ね上がり、先生の顎を蹴り上げるという、脚気(かっけ)の疑いを全否定した成果をみせた。

 

 

後にも先にも、人様の顔を蹴り上げる、などという所作は、これ一度であろうと思われます。