いつもの散歩道。
冷気にさらされた裸木に視線を移すと、冬芽を見つけることができる。
桜の木の下を通り抜けると、梅の木があって、
一足先に、ほころび始めた蕾を見つけた。
もう、濃いピンクの花びらが顔を出していて、
私の顔までほころぶ。
"今年も春がやってくる”
なんて、多方面に渡る洒落っ気がマイブームになっていて、
感慨にふけってみたりしている。
よし、歩くか、と気合いが入り、てくてくと歩いていると、
「寒いやろー。」と、いつも会うおっちゃん現る。白のわんこが今日もお供。
「こんなん寒い時に出てきたらぁ・・・」
「お互いにぃ!」
距離があるので、ちょっと大きな声で返す。
「ワシはしょーもなく出てきとるんだわ。だけど・・・」
わんこを指さしながら、そう言う。
「ゆっくりでもそれだけ歩けていいなぁ。そのうち走れるぞ。毎日やっとるから・・・」
おっちゃんから初めて、励ましの言葉を貰った。
いつも、何か言おうとしてくれているのが、わかるのだけれど、
おっちゃんの中の何かが躊躇させるみたいで、最後まで言わないおっちゃんの言葉。
それでも気遣いや、心配してくれているのが伝わってきて、
おっちゃんとの声掛けは、温かい気持ちになるのだ。
別の日に、
空がとても綺麗で、自分の真上の空を見たくなって、電動車椅子に座ったまま仰ぎ見た。
このままだと疲れそうなので、次は首を横に傾けた姿勢をとって、しばらく空を見上げていた。
むくっと姿勢を正したときに、数メートル先で、オロオロとしているおばあちゃんが、視界に入った。
私と目が合った(気がした)ら、一瞬動きが止まり、くるっと反転して行ってしまった。
”んー?”
どうしたのかな、と思っていたら、どうしたのかなと思っていたのは、おばあちゃんの方だったのでは?と気がついた。
”気を失っている?”
”まさか・・・死んじゃっている?”
あちゃー、心配かけてごめんよ、おばあちゃん。
そりゃそうだ。
車椅子に座っている人の首が倒れていて、そのまま動かなかったら心配するよ。うん。
何処かで誰かが見ていてくれている。そう思ってもいいよね。