クロックタワーコンサート
~京都大学と京都市立芸術大学による交流の午後~
モーツァルトと一緒に楽しむ交響曲の歴史の旅
【日時】
2023年5月21日(日) 開演 15:00
【会場】
京都大学百周年時計台記念館 百周年記念ホール
【演奏】
指揮:東尾多聞 *、福澤佑樹 #、森脇涼 +、中田延亮 ‡
管弦楽:京都市立芸術大学アカデミーオーケストラ
【プログラム】
モーツァルト:交響曲 第1番 変ホ長調 KV16 *
C.P.E.バッハ:弦楽のための6つのシンフォニア より 第1番 ト長調 wq182/1, H657 #
ハイドン:交響曲 第88番 ト長調 Hob.I;88 「V字」 +
モーツァルト:交響曲 第39番 変ホ長調 KV543 ‡
京都市立芸術大学アカデミーオーケストラの演奏会を聴きに行った。
指揮は、京都市立芸術大学音楽学部非常勤講師を務める中田延亮と、音楽学部指揮専攻在学中の3人。
交響曲というジャンルが始まって間もない草分け時代の交響曲4曲を、作曲年代順にたどるというプログラム構成になっている。
優秀な若き音楽家たちの演奏が無料で聴け、分かりやすい楽曲解説もあって楽しい。
2005年から毎年やっている(コロナ禍を除いて)とのことであり、これまでも聴きにきておけばよかった。
最初のプログラムは、モーツァルトの交響曲第1番、続いてC.P.E.バッハの「弦楽のための6つのシンフォニア」第1番。
普段録音ではあまり聴かないこれらの曲も、生演奏だとスルスル耳に入って楽しく聴けてしまう。
作曲年代は十年も違わない、でもモーツァルトは8歳、C.P.E.バッハは59歳時に書いた作品。
新旧の巨匠の競演を聴くようで面白かった。
モーツァルトは子どもの頃から“バランス感覚おばけ”だったのだと改めて気づかされる(逆にC.P.E.バッハは歳取ってもとんがっている)。
次のプログラムは、ハイドンの交響曲第88番「V字」。
この曲で私の好きな録音は
●C.クラウス指揮 ウィーン・フィル 1929年セッション盤(YouTube)
●フルトヴェングラー指揮 ベルリン・フィル 1951年12月4,5日セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube1/2/3/4)
●ライナー指揮 シカゴ響 1960年2月6日セッション盤(Apple Music/CD)
●ベーム指揮 ウィーン・フィル 1972年9月セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube1/2/3/4)
●飯森範親指揮 日本センチュリー響 2016年12月9日大阪ライヴ盤(NML/Apple Music/CD)
あたりである。
ウィーン・フィルの美音をとことん引き出したクラウスとベーム。
この曲を“ハイドンのエロイカ交響曲”としてベートーヴェン風に力強く扱ったフルトヴェングラーとライナー(前者は重量級、後者は豪速球)。
古楽器風の軽快さを取り入れつつも壮麗さを失わない飯森範親。
今回の京芸オケも、これらの名盤に並ぶとは言わないが、なかなかの演奏。
心なしか、先の2曲よりも少し充実度の高い演奏に聴こえた。
音の強さの変化などの工夫は先の2曲でも聴かれたのだが、それがより堂に入っているというか。
音の質もパキッとして鳴りが良い。
良い指揮者、ということかもしれない。
あるいは、編成が少し大きめの曲だからそう聴こえたのか。
ともあれ、今回の演奏会では最も印象に残った。
最後のプログラムは、モーツァルトの交響曲第39番。
この曲で私の好きな録音は
●ワルター指揮 BBC響 1934年5月22日セッション盤(CD)
●カラヤン指揮 ウィーン・フィル 1949年10月20,26日、11月10日セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube1/2/3/4)
●ワルター指揮 ニューヨーク・フィル 1953年12月21日、1956年3月5日セッション盤(Apple Music/CD/YouTube1/2/3/4)
●ベーム指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管 1955年9月セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube1/2/3/4)
●ワルター指揮 コロンビア響 1960年2月20,23日セッション盤(Apple Music)
●ベーム指揮 ベルリン・フィル 1966年2月セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube1/2/3/4)
●クリップス指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管 1972年6月セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube1/2/3/4)
●ベーム指揮 ウィーン・フィル 1979年3月セッション盤(CD)
●ワーズワース指揮 カペラ・イストロポリターナ 1988年9月セッション盤(NML/Apple Music/CD)
●アバド指揮 モーツァルト管 2008年6月9-11日ボローニャライヴ盤(NML/Apple Music/CD/YouTube1/2/3/4)
あたりである。
たくさん挙げすぎてしまったが、これでも絞ったつもり。
モーツァルトのスペシャリストであるワルターとベームのそれぞれ3種のセッション盤は外せない。
世界三大オケを振って最高の名盤を残したベームと、時代に翻弄されてそれは叶わなかったけれど別の三つのオケを振って全く遜色ない名盤を残したワルター。
そんな彼らのノーブルな歌を受け継いだクリップスとワーズワース。
また、推進力と流麗さで勝負するカラヤンとアバド。
今回の中田延亮&京芸オケの演奏は、いかんせん名曲だけあって耳のほうも贅沢で、もっと美しくあってほしい箇所もあったけれど、最善は尽くされていたように思う。
序奏があっさりと速めで主部とのテンポ差があまりない今風の様式であり、その点では上記名盤のうちアバド盤に近い。
ただ、その主部の主要主題には甘美なポルタメントが付されており、その点では昔風である(実はアバドもわずかにポルタメントをかけているが、今回の演奏ではよりはっきりと聴こえた)。
つまり折衷的ということになるが、今風の様式でも歌は大事にしたいという指揮者のこだわりが感じられた。
このホールはステージがガラス張りになっていて、外の光が入って明るく、ステージの後ろの樹木も見ながら心地よく聴ける。
音響はデッドなので奏者は大変だと思うが、また聴きに行きたい。
(画像はこちらのページよりお借りしました)
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