「R.シューマン」 室内楽全集 VOL.1
- 3つのピアノ三重奏曲 -
※ライブストリーミング配信
【日時】
2022年1月13日(木) 開演 19:30
2022年1月14日(金) 開演 19:30
【会場】
カフェ・モンタージュ (京都)
【演奏】
ピアノ:島田彩乃
ヴァイオリン:上里はな子
チェロ:江口心一
【プログラム】
シューマン:ピアノ三重奏曲 第1番 ニ短調 op.63
シューマン:ピアノ三重奏曲 第2番 ヘ長調 op.80
シューマン:ピアノ三重奏曲 第3番 ト短調 op.110
カフェ・モンタージュのコンサートをオンライン配信で聴いた。
好きなヴァイオリニスト、上里はな子を中心とするシューマンの室内楽全曲演奏会シリーズが開始されるようで、今回はその第1回である。
プログラムは、シューマンのピアノ三重奏曲第1~3番。
これらの曲で私の好きな録音は
●コルトー(Pf) ティボー(Vn) カザルス(Vc) 1928年11月15,18日、12月3日セッション盤(CD/YouTube) ※第1番のみ
●ギレリス(Pf) コーガン(Vn) ロストロポーヴィチ(Vc) 1958年8月8日セッション盤(Apple Music/YouTube1/2/3/4) ※第1番のみ
●アンスネス(Pf) C.テツラフ(Vn) T.テツラフ(Vc) 2009年9月、2010年5月セッション盤(NML/Apple Music/CD/YouTube) ※第1~3番
※YouTubeのページに飛ばない場合はこちら → https://www.youtube.com/watch?v=yC0gg_czYgo&list=OLAK5uy_n96fTrftG6BYUg6jkLgLguPkokrg7OW1E
あたりである。
今回の上里はな子らの演奏は、これらの名盤に比肩しうるものだと思う。
すっきりしたアンスネス盤に比べると音がずっしりと分厚くて往年の演奏を思わせるが、コルトー盤やギレリス盤のような“崩し”はなく、楷書風のかっちりした端正な様式である。
上のどの名盤よりも“ドイツ”を思わせる演奏。
私は、ブラームスと違ってシューマンではどちらかというと楷書よりも草書風の演奏を好むことが多いけれど、今回の上里はな子らの堂々たる第1番終楽章コーダなど聴いていると、これしかないとさえ思えてくる(上里はな子の重音奏法の輝かしいこと!)。
上里はな子、江口心一、島田彩乃、この3人によるトリオは、どこかオイストラフ・トリオを思わせるところがある。
オイストラフのように、大きな存在感のある重厚な音を持ち、トリオ全体を引っ張っていく上里はな子。
クヌシェヴィツキーのように、あまり前に出ることなく慎ましい、渋くて誠実な音楽を奏でる江口心一。
オボーリンのように、甘ったるさを抑えた、大柄で硬派なロマンティシズムを持つ島田彩乃。
なお、このトリオでは音楽の“主導権”が上里はな子のヴァイオリンにあるのだが、松本和将とのデュオの際にはそれがピアノへと移る。
これも「オイストラフ・トリオ」と「オイストラフとリヒテルとのデュオ」との関係に酷似していて、大変面白い。
この3人によるトリオ、今後もぜひ続けてほしいと感じた。
ところで、今回は2日にわたって同プログラムによる公演が行われたが、今回配信によってこの2公演を直接聴き比べることができたのは、またとない機会だった。
フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルの1952年12月7日と翌8日の「英雄」交響曲ライヴ録音を聴き比べるようなこうした体験は、めったにできることではない。
今回のトリオ、両日とも解釈はもちろん同じだが、細部の完成度が日によって微妙に異なり、それによって受ける印象も少しずつ変わってくるのが面白かった。
カフェ・モンタージュによるシューマンの室内楽全曲演奏会シリーズ、第2回以降も楽しみである。
(画像はこちらのページよりお借りしました)
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