静雄は見つけた。
見つけてしまったのだ。
沢山の人々が往来する池袋の大通りの中に混じったあの憎らしい黒コートを。
静雄の行動は速かった。
「いぃ~ざぁ~やぁ~」
静雄の声に人ごみがパックリと開いて道を作る。
そして近くにあったダストボックスを掴み上げて振りかぶったその時、
「わわわ!まっ、ままま待ってください静雄さんっ!おお俺です!宇晦也ですよっ!」
「…は?」
振り向いた黒コートの男が情けない声でストップをかけた。
静雄の手から離れる直前に勢いが削がれたソレが直ぐ手前に派手な音を立てて落ちると、男はひぃっ、と小さな悲鳴を上げた。
♂♀
「だから嫌だったんだよ兄さんの馬鹿ホントに何なのわざわざ俺にこんな暑苦しいコート着せてさ絶対にこうなること知っててやらせたんだよただでさえ顔似てて変な所からとばっちりくるから折角超立体マスク買って顔隠したってのにこんなコート着てたら目立ちまくりだろ最悪だマジで死にたくなってきたやっぱり来るんじゃなかった池袋…」
「わ、悪かったって」
「あぁ、良いんです。静雄さんは何も悪くないんです。全ての責任はあのろくでなしの馬鹿兄にあるんですから」
椅子に体育座りをしながら身体をゆらゆらと揺らす折原臨也…にそっくりな少年。
その周りだけどんよりとした空気が取り巻いている。
トムに誰かと聞かれた静雄は「ノミむ…臨也の弟っす」と答えた。
「どうも初めまして。折原臨也の弟の折原宇晦也です。…ウチの馬鹿兄がいつもいつもいつも迷惑ばかり掛けて本当にすいませんあああ穴があったら埋めてやりたい…」
ぱっ、と顔を上げてトムに挨拶してからまたブツブツと鬱モードに入ってしまった宇晦也を見て、静雄は小さく溜め息をついた。
「コイツは昔からこうなんすよ。兄弟のとばっちりを受けてネガティブになっちまったんです。何かもう俺がキレるのをためらうくらいに」
なるほど、とトムが頷くとほぼ同時に宇晦也が椅子から降り立つ。
「何かホントにすいませんでした…静雄さん、また愚痴聞いてくれたら嬉しいです。今度…何か奢りますね。…じゃあ、また………はぁ…………。」
「「…………。」」
特大の溜め息を吐き出してトボトボと歩く後ろ姿を見送りながら、ああ、なんで池袋に来たのか聞くの忘れたな、と静雄はボーッと思った。
▼折原宇晦也(オリハラウツヤ)
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┗・折原家次男で末っ子
・見た目が臨也そっくり
・でも性格は正反対
・常識人
・機械音痴
・苦労人
・マスク常備
・普段はカラコン着用
・能力値は全て平凡
・回避率だけMAX
・目が死んでる率高い
・チャットネームは『辛苦』
