民主政権の原子力政策に対する考え方がいま一つ明確ではない一方、脱・原子力を掲げる社民党が連立することがほぼ間違いない状態で、日本の原子力技術の未来に一抹の不安を感じます。
一般的に、原子力というと核兵器と結びつけて考える向きがあり敬遠されがちですが、原子力発電技術は核兵器技術に比して遙かに高い水準の保安技術に基づいているので、一緒くたに議論することには違和感があります。
根っこの技術が同じという点を以て「危険!きけん!キケン!」と思考停止すべきではありません。
もし実際に、脱・原子力が実行された場合、どのような事態が予想されるでしょうか。
1. CO2削減目標未達・エネルギー供給量不足
資源エネルギー庁によれば、2006年時点でのエネルギー源比率は
石油 47.1%
石炭 20.5%
天然ガス 15.1%
原子力 11.2%
水力 3.2%
新エネルギー・地熱等 2.9%
となっています。
2008年の集計では新エネの割合はもう少し増えていると思いますが、おおよその比率はこんなものでしょう。
仮に原子力抜きとなれば、これまで原子力が貢献していたCO2無排出枠を他の代替エネルギーで補うことになります。
しかも、石化燃料も削減しなくてはならない、となるとどうなるか。
新エネは未だ発電効率やコストの点で改善の余地が大きく、ドラスティックにCO2排出量を削減するまでには至りませんから、目標とするCO2削減量を達成できないばかりか、エネルギー需要に供給が追い付かないということになりかねません。
2. 技術の喪失
先に述べたように、原子力発電には非常に高度な技術が用いられています。
仮に脱・原子力により技術の伝承が途切れてしまった場合、将来必要となった時に再びその技術を取り戻すということは至難です。
日本の航空機産業をイメージすれば分かりやすいかもしれません。
敗戦後、GHQの政策により日本の航空産業は航空機本体の製造技術を喪失しました。
三菱重工によるYS-11や今回のMRJに関わるプロジェクトにおいて、大きな困難を経験した/しているのはこの経緯が少なからず影響しています。
また、ドイツの事例で言えば、シーメンスはかつて原子力技術を有していたものの、ドイツの国策である脱・原子力によりその技術レベルを大きく損ない、昨今ではロシア・ロスアトム社の技術に依存しているそうです。
技術水準の維持の為には、少なくとも一定の原子力事業の存続は必要です。
その点では、先の東芝によるウェスチングハウス買収や三菱重工によるフランス・アレバ社への出資は肯定的に受け取られるべき話でしょう。
民間のこうした動きに対して、新政権がどのようにアクションを取るか、注目されます。