【第一話】
上巻「お盆」
これはお盆の日に母・兄・祖母・私の4人でとある旅館に泊まりに行った時のお話です。
私の誕生日は8月の半ばでお盆の日なのですが、
毎年、誕生日の日にお墓参りに行くのが恒例となっていました。
その当時は小学2年生でまたいつものようにお墓参りに行き、
祖母の家に帰ってきてから誕生日を祝ってくれました。
その年はいつもと違い、みんなで旅館にお泊りしようという話になり、
誕生日の次の日にちょっとした旅行に行く事となりました。
旅館に到着すると目の前には広大な海が広がっており最高の眺めでした。
私と兄はまだ小学生だったのではしゃぎたい年頃ということもあり、
旅館に着くなりすぐに海に入りたいと駄々をこねました。
私「お母さん、兄ちゃんと海行ってきていい?」
母「今はお盆の時期だから海には入っちゃ駄目なんだよ?」
私「何でお盆の日に海に入っちゃいけないの?」
母「お盆はね、天国にいる人たちが少しの間だけこっちに帰ってこれる大事な時期なの
中には怖い人達が居てね、海に入っちゃうと地獄に連れて行こうとする人達がいるから
お盆の時期は海に入っちゃいけないんだよ」
私「そうなんだ・・・じゃあ海に入らないから見にいっていい?」
母「絶対入らないって約束できる?」
兄「大丈夫!僕がついてるから」
母「わかった。でも危ないからちょっとだけだよ?」
私・兄「はーい!」
そんなこんなで兄とハイテンションで海に向かうとお盆時期で
他に誰も居なくこんなに広い海を貸切状態だと思うと駄目といわれても泳ぎたくなるのが子供です。
それは私だけでなく兄も同じ気持ちでした。
兄とちょっとだけ泳ごうという話になり、素っ裸で海に足をつけると夏なのにかなり水温が低く、ものすごい鳥肌が立ちました。
一気に水に浸かると冷たさに慣れ、遠くに行かないよう浅瀬で泳いでいました。
すると突然、何かに右の足首を掴まれたのです。
いきなりの事でパニックになり、溺れた事のない私が溺れてしまい、
息が出来ず、どんどんと意識が薄れていきました。
私(僕はここで死んじゃうのか・・・早かったなぁ)
そう思っていると私の異変を察知した兄が私を海から引っ張り上げてくれたのです。
それと同時に私の足首を掴んでいた何かが離れ、私は何とか助かりました。
兄「大丈夫か?なんでこんな浅瀬で溺れてんだよ、お前泳げるだろ?」
私「違うよ兄ちゃん!何かが僕の足を掴んだんだよ」
兄「もしかしてクラゲに刺された?」
私「刺された事ないからわからないけど、ものすごい強さで引っ張られたの」
兄「気味悪いな、足はなんともない?」
私「いや掴まれた場所がものすごく痛い・・・」
兄「ちょっと見せてみろ」
兄「・・・・・・・・・・・うわっ!」
私「なに?なんかなってる?」
兄「お前・・・・足首に手の痕ついてるぞ」
私「え・・・・・なにこれ」
私が見た足首には女性のような細くて長い手痕が痣となり、くっきり残っていたのです。
怖くなった私たちはすぐに旅館に戻ることにしました。
しかし私たちは母との約束を破ったので、この事は2人だけの秘密にすることにしました。
下巻につづく
