父の夢を見た。あまりにも都合が良かったから、夢だと判断するのは簡単だった。
だがたとえ夢であっても、奇跡的にいま一度会えた父を前に私は涙を流した。
私は泣きながら父に伝えた。今までの感謝、あまり親孝行を出来なかったことの後悔、それらを声を絞り出すようにして吐き出した。
そんな私の言葉を、父は表情を変えずに聞いていた。いや、これは夢なのだから、私が父に向かって喋っていると都合よく考えているだけなのだ。
しかしそれでも、夢でも幻でも、思いを伝えることが出来たこの時間は本当に大切な時間だった。
目を覚ました私は涙を流していた…なんてことはなく、いつもと変わらない朝を迎えた。
夢のことを母に話そうかと思ったが、スピリチュアルな話を信じるタイプの母に話すと、「きっとお父さんが会いに来たんだよ」とか平気で言いそうなので黙っていることにした。
父の物語は終わりだ。しかし消え去るわけじゃあない。父が残した物はあるし、何より私たちがいる。私たちが覚えていれば父は消えないのだ。
いつまでも引きずらない、だけど忘れもしない。塩梅が難しいかもしれないが、そうして語り継いでいくのが一番なのだろう。
生きていくって辛いなぁ…。だけどまぁ、歩くしかないよな。
今度また家族を見送る時には、出来る限り後悔の無いようにしよう。
そして自分が旅立つ時には、たくさんの人が泣いてくれるようにしておこう。
「お父さん、友達いなかったからなぁ…」
亡き父から切実な教訓を得た気がした。