ニコニコイズマインを聴け!!
ぐりーくはよく出来た替え歌が大好きなのですが、以前大変感銘を受けた「私はニコ厨」の人がワールドイズマインの替え歌を投稿しておられました。
ニコニコイズマイン
この人って替え歌が上手いだけじゃなくて声がめっさ可愛いのよな。
ニコニコイズマイン
この人って替え歌が上手いだけじゃなくて声がめっさ可愛いのよな。
SS『悪ノ娘ト召使』(ボーカロイド)
悪ノ娘(なまこにゅる粉さん)
悪ノ召使
今日ふと衝動に襲われて2時間で書いた。小説書くのほんっっっっとにひさしぶりなんで粗も多いと思うけど、ご勘弁を。
……っていうか、あくまでこの二曲の雰囲気を元に書いただけなんで、細かい違いについてはスルーしてください。よろすく。
**************
牢獄に独り幽閉されて、はや三日。
今日、彼女は処刑される。
王家の娘として、覚悟は既に済ませた。
まさかこの身が、怒り狂う民草への贄として捧げられようとは、思いもしていなかったけれど。
望んで叶わなかった事など、皆無に近い。
蒼の王子こそ手に入れ損ねたが、彼を奪った翠の姫は、相応の報いを受けた。
いつだって、彼女はただ『彼』に告げるだけ。
それだけで、全ては実現したのだ。
「……くっ」
――カタカタと震える両の手が、憎らしい。
愚民共の眼前でこの首を落とされるなど、屈辱の極みだ。せめて王女として、毅然として在りたいと思うのに。
ああ、何故だろう。
かつての私は、あんなにも自由だったのに。
何故今はこんなにも無力に、ただ処刑を待つだけの身に貶められているのか……!
キィ、と音がして、身体が硬直した。まさか、まだ時間には早すぎる!
……下手人が顔を出し、王女はフンと鼻を鳴らした。
やってきたのは、忠実な召使の少年。とっくに捕えられたものと思っていたが、うまく逃げていたのか。
「……ああ、貴方だったの。ようこそ、とでも言えばいいかしら。
それで、今更何をしに? 仕えた主の無様な姿を笑いにでも来たの?」
「いいえ」
散々無茶を言ってきた、それくらいの自覚はあった。
どうせ民草に殺される身だ。これまでの鬱憤晴らしなら受け止めてやろう……と思っていたのだが、少年ははっきりと否定した。
それはそれで白けた気分になる。
……彼が室内に入ってきたその瞬間から、あれほど抑え難かった恐怖がほとんど霧消していることに、王女は気付いていなかった。
「遅れてしまって申し訳ありません。
お仕えして参りました殿下への、最期のご奉公に上がりました」
「最期、ね。確かにその通りだわ」
再び鼻を鳴らす。相変わらずつまらない男だ。気晴らしに何か手土産でも持ってきたのかと思いきや、彼は手ぶらで、身に纏う衣服もいつもと変わらない。
視線をやり、続きを促す。彼は話し始めた。
「今日の午後三時、殿下の処刑が執り行われます。その意味が、殿下にはおわかりですか?」
「……呆れた。よりによってそんな話をしにきたの?」
「申し訳ありません。ですが、私にとってもこれが最期です。どうかお付き合いください」
「はあ、わかったわ。……私の処刑の意味、だったわね。
そんなの決まっているわ。愚民共の不満の捌け口よ」
そんな不満、抱く方が筋違いだ。王家の庇護の下、王家のによって生きることを許されているだけの下等な者達が、何を以って弑逆を正当化するつもりか。
彼女は本気でそう信じていた。
……そうした彼女の考え方こそが民の怒りの原因だと、指摘する者はこれまでどこにもいなかった。
召使の少年はひとつうなずいてから続けた。
「その通りです。彼らは革命の成功を全ての民に示さねばなりません。
必要なのは、『大衆の面前で、姫の首を落とした』という事実。それによって、王家は名実共に終焉を迎える。
……しかしながら。逆に言えば、真実がどうあろうと彼らには関係ないのです」
「真実が、どうあろうと……?」
目の前の少年が何を言っているのか、彼女は図りかねた。
次の一言を聞くまで。
「恐れながら、私達は双子です。
処刑されるのが殿下であるか私であるかなど、彼らにはわかりません。
私と殿下の服を交換すれば、貴女は助かる」
殴られたような衝撃が奔る。視界が揺れ、思わずベッドに手を付いた。
今、この者は何を言った? 双子? 服の交換? 一体何のつもりだ?
理由もわからないまま、言葉だけが口をついて出てくる。
「何……何を言って……?」
「手配は済んでいます。貴女を護る騎士達が、廊下に既に控えている。
――お逃げください、殿下。処刑されるのは、私でいい」
「っ!?」
ヒュッ
彼の言葉、その意味をようやく理解して、先ほどまでとは意味の違う、もっと根源的な恐怖に身体が竦んだ。
身体が勝手に息を吸い込む。滑り込んだ風が、肺の腑を冷たく灼いていくよう。
『最期のご奉公』。
それは、誰にとっての『最期』か。
「召使のくせに私に命令しないで! 何様のつもりなのよ!」
気付けば叫んでいた。捕えられた際に負わされた傷が、かっと燃え上がるように痛む。
「殿下……」
「馬鹿じゃないの!? あいつらが憎んでいるのはこの私よ!
どうして貴方が私の代わりに死ななきゃいけないのよ……っ」
意図せず、嗚咽が混じる。全身全霊を込めて、馬鹿なことを言い出した召使の少年の胸を叩き続けた。困ったような、それでも一歩も引くつもりのない……そんな初めて見る顔で、彼は自分を見ている。
嗚呼、そうだ。彼はただの召使ではない。少なくとも、この自分にとっては。
どうして忘れていたのだろう。否、どうして忘れたふりをしていられたのだろう。彼は、彼はこの私の――
がしっと腕を取られ、そのまま抱きしめられた。
身体が震える。それは恐怖ではなく、数年振りの……否、十年以上も味わうことのなかった安堵。
肉親に護られる、絶対的な安心感。
「……馬鹿はそっちだろ。
弟が姉を助けるなんて、当たり前のことじゃないか」
「っ!」
囁かれる、優しい声。
真実を忘れ去り、ただただ忠誠を享受した自分とは違う。彼は、王女である自分に仕えながらも、忘れていなかったのだ。
彼が身じろぎするのが伝わってくる。
一体何をするつもりか。訝しく思う彼女に、少年は呟いた。
「ごめんね。ちょっと、痛くするよ」
「……? っ、まさか!?
やめなさい、やめて――っ」
彼が何をしようとしているのかを悟り、彼女は半狂乱になりながら少年を突き飛ばそうとした。だが時は既に遅く、誰よりも近くに在り続けた少年の拳は、彼女の華奢な身体に叩き込まれている。
抗えるはずも無かった。元よりその身は金の王女、ただ護られ傅かれるべき存在である。
霞む視界に、彼の顔が映る。儚げに微笑む、自分と同じ顔。
あの日以来、常に傍らに仕えてきた少年は、
「――リン。君は、生きて」
事此処に至って初めて――『弟』の顔をして、呪いにも似た願いを残す。
最早悲鳴を上げることすらできずに、彼女はくずおれた。
そっと身体を支える少年。彼の手の温かさに、すがりつきながら。
「ぁ……っ、レ…!!」
二人の運命が分かたれたあの幼き日以来、ただの一度も呼ばなかった弟の名を、口にすることすら叶わぬまま。
◆◇◆◇◆◇◆◇
レンは、姉のドレスを丁寧に脱がせ、自ら纏った。代わりに、自分の着ていた傍仕えとしての正装を彼女に着せる。鬘をつけ、身支度を整えてから、控えていた家来達を呼んだ。
手筈は伝えてある。全ての注目が処刑場に集まる今日の午後三時、間もなく訪れるその瞬間、手薄になった警備の目をかすめ、街を脱出する。所詮は烏合の衆、どれだけ士気が高かろうと正規の兵ではない。錬度の低い彼らを出し抜くのは、容易なはずだった。
彼らを信じて、自分は自分の役割を果たそう。
「――お願いします」
そうして彼は、一人牢獄に取り残される。
十四歳という年齢が幸いだった。あと三年遅かったら、入れ替わりは上手くいかなかっただろう。レンの成長期はまだ来ていない。二人の背格好にそれほどの違いはないから、今ならかろうじて誤魔化せるはずだ。
何故王女の身代わりを、ある人にそう尋ねられた。
貴方を縛り続けた王家が滅び、ただのひとりの『レン』として生きていく最高の機会を、何故みすみす手放すのかと。
……正直、可笑しくて堪らない。
「――そんなの、決まってるじゃないか」
レンは薄く微笑んだ。
もしも。
もしもあの日、僕らの運命が逆に刻まれたなら。
姉もまた、同じ行動を取ったに違いないから。
今回はたまたま立場がこうだっただけのこと。
血を分けた双子だから、断言できる。
それに、姉の非道の責任は、自分にもある。
大人たちの勝手な都合で、切り裂かれた運命。理不尽に背負わされた、『ただ一人の』王女としての重責。
せめて弟の自分だけは、世界の全てを敵に回してでも護り抜く……その願いが、姉を歪めた。何をしても許される、何を望んでも叶うと、そう思わせてしまったのは誰か。……他でもない、どんな理不尽にも異を唱えることなく、何もかもを実現させてきた、この自分だ。
ならば、差し出されるべき生贄は彼女ではない。
姉を護るのは弟の義務。『金の王女』として、精々潔く散るとしよう。
双子の存在を知る者はごく僅か。入れ替わりが発覚するとしても、その頃には姉は遠くへ逃げている。
だから、何一つ思い残す必要はない。
「……ああ、いや。ひとつだけ、あるか」
――遠い記憶。
二人が分かたれるより以前、姉と一緒に過ごした日々。
もう思い返すのも難しいくらいおぼろげだけれど、二人で遊んだあの時間は、何よりも尊い思い出だった。
「ねえ、リン。僕が再び生まれ変われるとしたら。
君が望んでくれるかどうかはわからないけど、僕はまた君の双子になりたい。
そうしたら今度こそ、姉弟で仲良く過ごそう。
また、一緒に遊ぼうね」
虚空へ向けて、レンは微笑む。
思い浮かべるのは、愛しい双子の姉のこと。
一人佇むレンの耳に、カツカツと軍靴の音が届いた。
音は複数。なるほど、そろそろ時間か。
開かれる扉に、彼はゆっくりと視線を投げやった。
否、そこに居るのは最早『彼』ではない。
悪逆非道の限りを尽くした。『悪ノ娘』と呼ばれた黄金の王女である。
◇◆◇◆◇◆
――――――。
◇◆◇◆◇◆
午後三時。
街の広場で鐘が鳴る。
重々しいその響きは、失われた数々の命の嘆きか。
それとも――
悪ノ召使
今日ふと衝動に襲われて2時間で書いた。小説書くのほんっっっっとにひさしぶりなんで粗も多いと思うけど、ご勘弁を。
……っていうか、あくまでこの二曲の雰囲気を元に書いただけなんで、細かい違いについてはスルーしてください。よろすく。
**************
牢獄に独り幽閉されて、はや三日。
今日、彼女は処刑される。
王家の娘として、覚悟は既に済ませた。
まさかこの身が、怒り狂う民草への贄として捧げられようとは、思いもしていなかったけれど。
望んで叶わなかった事など、皆無に近い。
蒼の王子こそ手に入れ損ねたが、彼を奪った翠の姫は、相応の報いを受けた。
いつだって、彼女はただ『彼』に告げるだけ。
それだけで、全ては実現したのだ。
「……くっ」
――カタカタと震える両の手が、憎らしい。
愚民共の眼前でこの首を落とされるなど、屈辱の極みだ。せめて王女として、毅然として在りたいと思うのに。
ああ、何故だろう。
かつての私は、あんなにも自由だったのに。
何故今はこんなにも無力に、ただ処刑を待つだけの身に貶められているのか……!
キィ、と音がして、身体が硬直した。まさか、まだ時間には早すぎる!
……下手人が顔を出し、王女はフンと鼻を鳴らした。
やってきたのは、忠実な召使の少年。とっくに捕えられたものと思っていたが、うまく逃げていたのか。
「……ああ、貴方だったの。ようこそ、とでも言えばいいかしら。
それで、今更何をしに? 仕えた主の無様な姿を笑いにでも来たの?」
「いいえ」
散々無茶を言ってきた、それくらいの自覚はあった。
どうせ民草に殺される身だ。これまでの鬱憤晴らしなら受け止めてやろう……と思っていたのだが、少年ははっきりと否定した。
それはそれで白けた気分になる。
……彼が室内に入ってきたその瞬間から、あれほど抑え難かった恐怖がほとんど霧消していることに、王女は気付いていなかった。
「遅れてしまって申し訳ありません。
お仕えして参りました殿下への、最期のご奉公に上がりました」
「最期、ね。確かにその通りだわ」
再び鼻を鳴らす。相変わらずつまらない男だ。気晴らしに何か手土産でも持ってきたのかと思いきや、彼は手ぶらで、身に纏う衣服もいつもと変わらない。
視線をやり、続きを促す。彼は話し始めた。
「今日の午後三時、殿下の処刑が執り行われます。その意味が、殿下にはおわかりですか?」
「……呆れた。よりによってそんな話をしにきたの?」
「申し訳ありません。ですが、私にとってもこれが最期です。どうかお付き合いください」
「はあ、わかったわ。……私の処刑の意味、だったわね。
そんなの決まっているわ。愚民共の不満の捌け口よ」
そんな不満、抱く方が筋違いだ。王家の庇護の下、王家のによって生きることを許されているだけの下等な者達が、何を以って弑逆を正当化するつもりか。
彼女は本気でそう信じていた。
……そうした彼女の考え方こそが民の怒りの原因だと、指摘する者はこれまでどこにもいなかった。
召使の少年はひとつうなずいてから続けた。
「その通りです。彼らは革命の成功を全ての民に示さねばなりません。
必要なのは、『大衆の面前で、姫の首を落とした』という事実。それによって、王家は名実共に終焉を迎える。
……しかしながら。逆に言えば、真実がどうあろうと彼らには関係ないのです」
「真実が、どうあろうと……?」
目の前の少年が何を言っているのか、彼女は図りかねた。
次の一言を聞くまで。
「恐れながら、私達は双子です。
処刑されるのが殿下であるか私であるかなど、彼らにはわかりません。
私と殿下の服を交換すれば、貴女は助かる」
殴られたような衝撃が奔る。視界が揺れ、思わずベッドに手を付いた。
今、この者は何を言った? 双子? 服の交換? 一体何のつもりだ?
理由もわからないまま、言葉だけが口をついて出てくる。
「何……何を言って……?」
「手配は済んでいます。貴女を護る騎士達が、廊下に既に控えている。
――お逃げください、殿下。処刑されるのは、私でいい」
「っ!?」
ヒュッ
彼の言葉、その意味をようやく理解して、先ほどまでとは意味の違う、もっと根源的な恐怖に身体が竦んだ。
身体が勝手に息を吸い込む。滑り込んだ風が、肺の腑を冷たく灼いていくよう。
『最期のご奉公』。
それは、誰にとっての『最期』か。
「召使のくせに私に命令しないで! 何様のつもりなのよ!」
気付けば叫んでいた。捕えられた際に負わされた傷が、かっと燃え上がるように痛む。
「殿下……」
「馬鹿じゃないの!? あいつらが憎んでいるのはこの私よ!
どうして貴方が私の代わりに死ななきゃいけないのよ……っ」
意図せず、嗚咽が混じる。全身全霊を込めて、馬鹿なことを言い出した召使の少年の胸を叩き続けた。困ったような、それでも一歩も引くつもりのない……そんな初めて見る顔で、彼は自分を見ている。
嗚呼、そうだ。彼はただの召使ではない。少なくとも、この自分にとっては。
どうして忘れていたのだろう。否、どうして忘れたふりをしていられたのだろう。彼は、彼はこの私の――
がしっと腕を取られ、そのまま抱きしめられた。
身体が震える。それは恐怖ではなく、数年振りの……否、十年以上も味わうことのなかった安堵。
肉親に護られる、絶対的な安心感。
「……馬鹿はそっちだろ。
弟が姉を助けるなんて、当たり前のことじゃないか」
「っ!」
囁かれる、優しい声。
真実を忘れ去り、ただただ忠誠を享受した自分とは違う。彼は、王女である自分に仕えながらも、忘れていなかったのだ。
彼が身じろぎするのが伝わってくる。
一体何をするつもりか。訝しく思う彼女に、少年は呟いた。
「ごめんね。ちょっと、痛くするよ」
「……? っ、まさか!?
やめなさい、やめて――っ」
彼が何をしようとしているのかを悟り、彼女は半狂乱になりながら少年を突き飛ばそうとした。だが時は既に遅く、誰よりも近くに在り続けた少年の拳は、彼女の華奢な身体に叩き込まれている。
抗えるはずも無かった。元よりその身は金の王女、ただ護られ傅かれるべき存在である。
霞む視界に、彼の顔が映る。儚げに微笑む、自分と同じ顔。
あの日以来、常に傍らに仕えてきた少年は、
「――リン。君は、生きて」
事此処に至って初めて――『弟』の顔をして、呪いにも似た願いを残す。
最早悲鳴を上げることすらできずに、彼女はくずおれた。
そっと身体を支える少年。彼の手の温かさに、すがりつきながら。
「ぁ……っ、レ…!!」
二人の運命が分かたれたあの幼き日以来、ただの一度も呼ばなかった弟の名を、口にすることすら叶わぬまま。
◆◇◆◇◆◇◆◇
レンは、姉のドレスを丁寧に脱がせ、自ら纏った。代わりに、自分の着ていた傍仕えとしての正装を彼女に着せる。鬘をつけ、身支度を整えてから、控えていた家来達を呼んだ。
手筈は伝えてある。全ての注目が処刑場に集まる今日の午後三時、間もなく訪れるその瞬間、手薄になった警備の目をかすめ、街を脱出する。所詮は烏合の衆、どれだけ士気が高かろうと正規の兵ではない。錬度の低い彼らを出し抜くのは、容易なはずだった。
彼らを信じて、自分は自分の役割を果たそう。
「――お願いします」
そうして彼は、一人牢獄に取り残される。
十四歳という年齢が幸いだった。あと三年遅かったら、入れ替わりは上手くいかなかっただろう。レンの成長期はまだ来ていない。二人の背格好にそれほどの違いはないから、今ならかろうじて誤魔化せるはずだ。
何故王女の身代わりを、ある人にそう尋ねられた。
貴方を縛り続けた王家が滅び、ただのひとりの『レン』として生きていく最高の機会を、何故みすみす手放すのかと。
……正直、可笑しくて堪らない。
「――そんなの、決まってるじゃないか」
レンは薄く微笑んだ。
もしも。
もしもあの日、僕らの運命が逆に刻まれたなら。
姉もまた、同じ行動を取ったに違いないから。
今回はたまたま立場がこうだっただけのこと。
血を分けた双子だから、断言できる。
それに、姉の非道の責任は、自分にもある。
大人たちの勝手な都合で、切り裂かれた運命。理不尽に背負わされた、『ただ一人の』王女としての重責。
せめて弟の自分だけは、世界の全てを敵に回してでも護り抜く……その願いが、姉を歪めた。何をしても許される、何を望んでも叶うと、そう思わせてしまったのは誰か。……他でもない、どんな理不尽にも異を唱えることなく、何もかもを実現させてきた、この自分だ。
ならば、差し出されるべき生贄は彼女ではない。
姉を護るのは弟の義務。『金の王女』として、精々潔く散るとしよう。
双子の存在を知る者はごく僅か。入れ替わりが発覚するとしても、その頃には姉は遠くへ逃げている。
だから、何一つ思い残す必要はない。
「……ああ、いや。ひとつだけ、あるか」
――遠い記憶。
二人が分かたれるより以前、姉と一緒に過ごした日々。
もう思い返すのも難しいくらいおぼろげだけれど、二人で遊んだあの時間は、何よりも尊い思い出だった。
「ねえ、リン。僕が再び生まれ変われるとしたら。
君が望んでくれるかどうかはわからないけど、僕はまた君の双子になりたい。
そうしたら今度こそ、姉弟で仲良く過ごそう。
また、一緒に遊ぼうね」
虚空へ向けて、レンは微笑む。
思い浮かべるのは、愛しい双子の姉のこと。
一人佇むレンの耳に、カツカツと軍靴の音が届いた。
音は複数。なるほど、そろそろ時間か。
開かれる扉に、彼はゆっくりと視線を投げやった。
否、そこに居るのは最早『彼』ではない。
悪逆非道の限りを尽くした。『悪ノ娘』と呼ばれた黄金の王女である。
◇◆◇◆◇◆
――――――。
◇◆◇◆◇◆
午後三時。
街の広場で鐘が鳴る。
重々しいその響きは、失われた数々の命の嘆きか。
それとも――