「Daily Star」の記事より

3.ビッグリップ(The Big Rip)

 

 具体的には暗黒エネルギー(Phantom Dark Energy)と呼ばれる神秘的な概念で、時空が不安定になるまで宇宙の膨張を加速させる元になる未知のエネルギーが導く宇宙の終わりだ。

 マック氏はそれを「有限時間での宇宙の恐ろしい破壊」と表現している。膨張が加速することで空間がゆがみどんどん不安定になり、銀河は軌道から解き放たれる。やがて惑星をはじめ宇宙の全ての物質はこの加速の影響により未来のある時点でバラバラになって雲散霧消し、事実上宇宙は崩壊するという。

4.バウンス(The Bounce)

 当然ではあるがビッグバン以前に何があったのか、“時間”が始まっていない状態であるため“無”であったとしか言えないものである。

 このバウンス理論は我々が見たり理解したりできるすべてのものは、高次元の領域に存在する想像を絶する広大な膜の間の泡のようなものとして存在するというものだ。

 ビッグバンの最初の“火花”は、これらの2つの膜が接触したときに起こり、次に再び接触した時には、宇宙全体が瞬時にして破壊される可能性があるということだ。

「Daily Star」の記事より

 

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5.真空崩壊(Vacuum Decay)

 

 マック氏の解説の中で最もSF的なコンセプトであるのが真空崩壊理論である。この理論は最近になってその存在が確認された素粒子、ヒッグス粒子に依拠している。

 このきわめて小さなヒッグス粒子は、すべての物質に質量を供給する。そして物質を安定化させ“真空”状態を形成する。しかしこのヒッグス粒子が関与している「ヒッグス場」においては、安定した状態は“偽の真空”であるかもしれないというのだ。

 もしヒッグス場が偽の真空であった場合、何らかのタイミングで本当の真空へと移行することが考えられ、そうなれば莫大なエネルギーが放出されて宇宙は終わりを迎えるのである。このメカニズムはまったく独自の自然法則に則っており、我々人類が培ってきた物理法則を完全に上書きするものになる可能性があるということだ。

 ほかの理論と異なり不気味なのは、この真空崩壊はいつ起こっても不思議ではない点だ。今この瞬間に起こることも理論上あり得るのである。そしてマック氏はこの斬新なアイデアである真空崩壊が最も気に入っているという。考え抜かれた末に登場した理論ではなく、どこからともなくひょっこり現れたように見えることも魅力的であるという。

 この宇宙にもいつか終わりの日が来るというのは納得せざるを得ないことだが、いきなりやって来るのはやはり勘弁願いたいものだ。とすれば真空崩壊説は否定したくなるのが人情というものだろう。宇宙がどのようにして終わりを迎えるのか。そして今後さらに有力な理論が登場してくるものなのか気になるところだ。

参考:「Daily Star」ほか

 

編集部